原二郎 (哲学者)

原二郎：モンテーニュ研究の第一人者

原二郎（1919年3月25日 - 2000年8月21日）は、20世紀の日本における重要な哲学者の一人です。彼の研究は、特にフランスの思想家モンテーニュに焦点を当て、その思想の普及と深化に大きく貢献しました。

生涯と学問

原二郎は宮城県亘理郡に生まれ、第二高等学校を経て、1941年に京都帝国大学経済学部を卒業しました。その後、大阪商船に入社しますが、1942年に応召。1944年に召集解除となり大阪商船を退社後、宮城県築館中学校で教鞭をとりました。1949年、東北大学法文学部哲学科を卒業、同大学院を中退後、東北大学教養部講師となり、1961年に助教授、1965年に教授に昇任しました。1982年に定年退官し、東北大学名誉教授となりました。

原二郎の学問的業績は、モンテーニュの研究と翻訳に集約されます。彼はモンテーニュの主著『エセー』の全訳を岩波文庫から刊行し、広く一般読者にモンテーニュを紹介しました。彼の翻訳は、原文のニュアンスを忠実に伝えつつ、日本語として読みやすい名訳として高く評価されています。

モンテーニュ研究

原二郎は、モンテーニュの思想を単なる歴史的な文献としてではなく、現代にも通じる普遍的な人間探求として捉えました。彼は『エセー』を通じて、モンテーニュが自己の内面を深く掘り下げ、人間性の複雑さや矛盾を率直に語っている点に注目しました。原二郎は、モンテーニュの思想が、現代社会における自己探求や多様性の尊重といったテーマに貢献できると信じていました。

著作と翻訳

原二郎は、モンテーニュに関する著作も多数発表しています。彼の著書『モンテーニュ　「エセー」の魅力』は、モンテーニュの思想のエッセンスを分かりやすく解説した入門書として、多くの読者に親しまれています。

主な著書:
『モンテーニュ　「エセー」の魅力』岩波新書 黄版 1980、岩波書店 1994

主な翻訳:
モンテーニュ『エセー』（全6冊） 岩波文庫 1965-1967、ワイド版 1991
モンテーニュ『エセー 抄』旺文社文庫 1969
『世界文學大系9A・9B モンテーニュ』筑摩書房 1962
『モンテーニュ・エセー』選訳 筑摩書房「筑摩叢書」1963
『世界古典文学全集37・38　モンテーニュ』筑摩書房 1967-1968
『筑摩世界文学大系13・14 モンテーニュ』筑摩書房 1973
『古典世界文学31・32　モンテーニュ』筑摩書房 1976


没する直前には、師である河野与一の著作の新訂再刊にも尽力しました。これは、彼が師への敬愛の念を持ち続け、学問的遺産を後世に伝えようとした証と言えるでしょう。

原二郎の業績は、モンテーニュ研究の基礎を築き、日本の哲学研究に大きな影響を与えました。彼の翻訳と研究は、今後も多くの読者や研究者に読み継がれていくことでしょう。

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