原子力損害賠償紛争解決センター

原子力損害賠償紛争解決センターとは

原子力損害賠償紛争解決センター（以下、センター）は、原子力発電所の事故によって損害を被った人々が、円滑、迅速かつ公正に紛争を解決することを目的として設立された、公的な紛争解決機関です。

設立の背景

東京電力福島第一原子力発電所事故および福島第二原子力発電所事故を受け、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会のもとに設置されました。このセンターは、文部科学省、法務省、裁判所、日本弁護士連合会出身の専門家によって構成されています。

組織と業務

センターの業務は、総括委員会が進行管理を行います。弁護士などの仲介委員が、原子力損害賠償に関する紛争について、和解の仲介手続きを行います。口頭審理は、原則として東京都港区内または福島県内の事務所で開催されます。

2011年8月29日に開所式が行われ、同年9月1日から申し立ての受付が開始されました。事務局は文部科学省研究開発局原子力損害賠償紛争和解仲介室に置かれ、同室長は佐々木宗啓元東京地方裁判所判事が務めています。

抱える問題点

賠償額の抑制

一部メディアの報道によると、福島第一原発事故で避難中に亡くなった住民の遺族に対し、センターが賠償額を半額に抑え込んでいたことが判明しています。これは、和解を迅速化させるために、センター側が東京電力（以下、東電）に賠償額を受け入れやすくしたためとされており、強い批判を浴びています。

立証責任の偏り

原発事故の影響で減収となった東京都内および神奈川県内のバス事業者計16社が、センターにADR（裁判外紛争解決手続き）を申し立てたところ、センター側が原発事故と減収の因果関係を証明する書類の提出を求めたことが明らかになりました。1社は提出できましたが、残りの事業者は提出できず、和解協議が打ち切られました。一方、福島県など賠償対象の10県内に事業所がある場合は、原発事故前後の決算書などの提出のみで済むとされています。この違いは、それ以外の都道府県に事業所がある場合、予約のキャンセル1件ごとに、事故による減収かどうかの証明が必要になるためとされています。

国の責任

国は原子力政策を推進し、電力会社を指導監督する立場にありました。したがって、賠償問題においても、国自らが責任を果たす必要があります。和解の約束を守らない東電を指導し、被害者へ適切な賠償を行うよう、国の指針を改定すべきとの意見が出ています。

賠償基準を超えた和解事例

2017年、相馬市において、公表された和解事例の中に、東電が提示する賠償基準よりも広く損害が認められた事例があることが分かりました。具体的には、「延長が認められた就労不能損害賠償」、「全損と認められた財物賠償」、「自主的除染に係る費用の賠償」の3種類が分類され、情報公開されています。また、避難生活による精神的損害に対する賠償額を増額できる条件や、その条件に当てはまる和解事例についても、分類して情報公開されています。

関連情報

裁判外紛争解決手続（ADR）

外部リンク

原子力損害賠償紛争解決センター：文部科学省

脚注

[1] 一部メディアの報道
[2] 原子力損害賠償紛争解決センターの公式サイト

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