原泉

原泉について

原泉（はらいずみ、1905年2月11日 - 1989年5月21日）は、島根県松江市に生まれた日本の著名な女優です。彼女の本名は中野政野で、わずかな時間で多彩な変化を遂げた役者として知られています。また、プロレタリア作家・文学者の中野重治を夫に持ち、彼との間に一人娘の卯女をもうけたことでも知られています。芸名の「原泉」は、彼女在籍時の呼び名でもありました。

幼少期と上京

原泉は10歳の時に母を失い、その後も継母との関係がうまくいかず、17歳で上京を決意しました。東京ではまず書道家の岡本高蔭に弟子入りし、その才能を生かしていましたが、妹の学費を稼ぐためにモデル事務所に登録し、彫刻のモデルとして活動を開始します。彼女の端正な容姿と存在感は多くの彫刻家に評価され、平松豊彦や堀江尚志といった著名なアーティストからの依頼が相次ぎました。

演劇への道

その後、原泉はプロレタリア演劇研究所に入所し、1928年には東京左翼劇場の旗揚げメンバーとして参加します。この劇団は当時の革新思想を体現する場所となり、ここで原泉はさまざまな役柄を演じます。1930年には生涯の伴侶ともなる中野重治と結婚し、夫婦で演劇活動に邁進しました。

1940年に新劇弾圧が行われ、彼女や仲間たちは敵視されて逮捕される事態に直面しますが、この経験が彼女の演技に深みを与える一因となったとも言われています。

後半生と再出発

1946年、原泉は新協劇団に参加し、しばらくした後にはフリーの女優として活動を開始しました。そして「原泉」という名前に改名し、老け役や不気味なキャラクターを得意とし、さまざまな映画やテレビドラマに出演し続けました。特に、年齢を重ねた役どころに関しては、彼女の演技力が特筆されるものでした。上品な老婦人から、狂気じみた姑、神秘的な霊媒師まで、幅広いキャラクターを生き生きと演じ分けました。

主な作品

彼女の映画出演においては、『太陽の子』や『風雪の春』などがあり、テレビドラマにおいても『おかあさん』や『太陽にほえろ!』など、多くの作品でその演技を披露してきました。また、彼女は特にバラエティ番組やCMにも出演し、様々な顔を見せました。

遺産と評価

1989年に84歳でこの世を去った原泉は、そのキャリアを通して多くの視聴者に愛され、尊敬され続けています。後世の女優たちに多大な影響を与えた彼女の存在は、今もなお日本の演劇界に根付いています。伝記や各種文献によって、彼女の足跡は今も語り継がれています。特に、藤森節子による著作『女優原泉子 中野重治と共に生きて』は、その業績を再評価するうえで貴重な資料とされています。

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