東京左翼劇場

東京左翼劇場：プロレタリア演劇運動の先駆け

東京左翼劇場は、1920年代後半から1930年代前半にかけて存在した日本の劇団で、プロレタリア演劇運動の中心的な役割を担いました。この劇団は、単に「左翼劇場」とも呼ばれ、その前身は前衛芸術家同盟傘下の「前衛劇場」と、日本プロレタリア芸術連盟傘下の「プロレタリア劇場」という二つの劇団です。

結成と活動

1928年、佐々木孝丸、村山知義、佐野碩らによって結成された東京左翼劇場は、宇野重吉、原泉、信欣三、水木洋子、八木隆一郎、池田生二、小沢栄太郎、滝沢修、久保栄、仲みどり、山本安英など、後の新劇界を担う多くの才能が集いました。彼らは、社会変革を目指すプロレタリア演劇を追求し、その活動は演劇界だけでなく、社会全体にも大きな影響を与えました。1934年6月に解散するまで、数多くの公演を行い、新劇運動の発展に貢献しました。

主な公演

東京左翼劇場の公演は、当時の社会状況を反映した作品が多く、観客に強い印象を与えました。以下に主な公演をいくつか紹介します。

第1回公演『磔茂左衛門』『嵐』：1928年4月、築地小劇場で上演された合同公演。藤森成吉作『磔茂左衛門』と鹿地亘作『嵐』は、劇団の出発点を示す重要な作品となりました。
第4回公演『ダントンの死』：1929年1月、ゲオルク・ビューヒナー原作のこの作品は、村山知義と佐野碩の演出によって、観客に深い感銘を与えました。
第12回公演『全線』：1929年6月、村山知義のオリジナル作品で、社会の矛盾を描いたこの作品は、劇団の社会意識の高さを表しています。
『太陽のない街』：1930年2月、徳永直の原作を基にしたこの作品は、プロレタリア文学と演劇の融合を象徴する作品として、大きな反響を呼びました。
* 『勝利の記録』：1931年5月、村山知義の作品で、革命運動の記録を基にした作品は、観客に強いメッセージを伝えました。


これらの公演以外にも、「父」、「白蟻」、「母」など、多くの作品が上演され、当時の演劇界に多大な影響を与えました。また、地方公演も積極的に行われ、福岡などでも公演を行いました。

前身劇団

東京左翼劇場の前身である「プロレタリア劇場」と「前衛劇場」も、それぞれ重要な役割を果たしました。「プロレタリア劇場」は、1927年から1928年にかけて活動し、佐野碩、佐藤武夫、皆川晃、平松豊彦、中村栄二などが参加しました。また、音楽面では小野宮吉や関鑑子が、美術面では柳瀬正夢が活躍しました。

映画製作

東京左翼劇場は、演劇だけでなく、映画製作にも力を入れていました。1928年には、プロレタリア映画班が結成され、野田醤油争議などを撮影しました。これらの映画活動は、後の日本プロレタリア映画同盟へとつながっていきました。

解散とその後の影響

1934年6月、東京左翼劇場は中央劇場と改称後、解散しました。しかし、その出身者の多くは新協劇団や新築地劇団などに合流し、日本の新劇界に大きな影響を与えました。東京左翼劇場は、短い活動期間であったにもかかわらず、プロレタリア演劇運動の先駆者として、その歴史に名を刻んでいます。

まとめ

東京左翼劇場は、プロレタリア演劇運動の重要な担い手として、日本の演劇史に大きな足跡を残しました。その活動は、演劇だけでなく映画製作にも及び、当時の社会変革を求める人々に大きな影響を与えました。この劇団の存在は、日本の演劇史において、決して忘れてはならない重要な出来事の一つです。

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