新協劇団

新協劇団とは

新協劇団は、日本の演劇史において重要な役割を果たした劇団です。1934年に結成され、1940年に弾圧により解散した第一次新協劇団と、1946年に再建され1959年に東京芸術座に再編された第二次新協劇団があります。この記事では、両劇団の歴史と活動について詳しく解説します。

新協劇団（第一次）

1934年、日本プロレタリア演劇同盟（プロット）解体後、村山知義の提唱により新協劇団が結成されました。中央劇場、新築地劇団、美術座など、当時の演劇界を牽引していた劇団のメンバーが参加し、秋田雨雀、村山知義、松本克平、三島雅夫、細川ちか子、赤木蘭子、原泉、信欣三、久板栄二郎、小沢栄太郎、久保栄、滝沢修、宇野重吉、小杉義男などが名を連ねました。同年11月には、村山知義脚色の「夜明け前・第一部」で旗揚げ公演を行いました。杉本良吉、下條正巳、仲みどり、北林谷栄、松村達雄、真山美保、山本安英なども後に加わりました。

新協劇団は、久保栄の『火山灰地』、ゴーリキーの『どん底』、本庄陸男原作の『石狩川』、ゲーテの『ファウスト』、シラーの『群盗』など、国内外の様々な戯曲を上演し、観客を魅了しました。映画界にも進出し、1939年には東宝映画と提携して『初恋』を製作しました。しかし、1938年には演出家の杉本良吉がソ連に亡命するという事件が発生し、劇団に暗い影を落としました。

1940年、劇団員や関係者26名が治安維持法違反で逮捕され、劇団は解散を余儀なくされました。逮捕者の中には、村山知義、久保栄、滝沢修、秋田雨雀、久板栄二郎、小沢栄太郎、三島雅夫、松本克平、信欣三、宇野重吉、細川ちか子、赤木蘭子、原泉などが含まれていました。また、支援組織も弾圧され、多くの人々が逮捕されました。新協劇団の解散は、戦前のプロレタリア演劇運動に大きな打撃を与えました。

新協劇団（第二次）

1946年、第二次世界大戦終結後、村山知義を中心に新協劇団が再建されました。しかし、第一次の主要メンバーであった久保栄や滝沢修は参加せず、土方与志、佐野浅夫、八田元夫、宇野重吉、井上正夫などが参加しました。1946年9月には、新協劇団と東京芸術劇場が合同で「どん底」を上演しました。

戦後、千石規子、岡田英次、清村耕次、下條正巳、灰地順、杉浦直樹、内田良平などが劇団に加わりました。しかし、宇野重吉は1947年に民衆芸術劇場を創設して退団し、1951年には薄田研二らが中央芸術劇場を創設するなど、劇団は分裂と弱体化を繰り返しました。1952年には、岡田英次が脱退し青年俳優クラブを結成しました。1957年には、映画『純愛物語』にエキストラとして出演しましたが、1959年に薄田研二らの中央芸術劇場と統合し、東京芸術座として再出発しました。

第二次新協劇団は、モリエールの『タルチュフ』、『桜の園』、徳永直原作の『静かなる山々』などを上演しました。社会主義思想を基盤とした演劇活動を行い、戦後の演劇界に大きな影響を与えました。

新協劇団の意義

新協劇団は、戦前・戦後を通じて、日本の演劇界に大きな足跡を残しました。プロレタリア演劇運動の流れを汲みながら、社会主義思想に基づいた演劇活動を展開し、多くの観客を魅了しました。また、多くの俳優や演出家、脚本家を輩出し、日本の演劇文化の発展に大きく貢献しました。

新協劇団の歴史は、日本の演劇史だけでなく、社会運動史、思想史においても重要な意味を持っています。その活動は、今日の演劇界にも影響を与え続けています。

エピソード

1940年4月、NHKのテレビ実験放送で、日本初のテレビドラマ『夕餉前』に劇団員が出演しました。
1954年、再演された「石狩川」のポスターを、粟津潔が担当しました。これは粟津の最初の仕事となりました。

主な出版物

『演劇論』（新協劇団編著、三笠書房、1936年）
『新協劇団』（新協劇団著、新協劇団刊、1939年）
『新協五週年史』（新協劇団著、新協劇団刊、1939年）

関連文献

村山知義「一つの足跡--トランク劇場から新協劇団まで」『民主評論』1948年9月号
村山知義「トランク劇場から新協劇団まで」『民主評論』1948年10月号
押川昌一『敗戦の象徴--新協劇団論劇団論』『日本演劇』1949年3月号
長橋光雄「『人間製本』からの若干の問題--新協劇団公演評」『テアトロ』1949年6月号
松尾哲次「戦前の新協劇団の活動--俳優座ゼミナールに於ける講演」『劇作』1949年7月号
高沢辰郎「文学座アトリヱ第2回発表会--新協劇団『雷雨』」『日本演劇』1949年12月号
今尾哲也「芸術は技術の上に成立する--新協劇団の『敵』」『演劇評論』1955年5月号

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