原理とパラメータのアプローチ

原理とパラメータのアプローチ

原理とパラメータのアプローチ（P&Pアプローチ）は、全ての言語が持つ共通の原則と、言語毎に選択されるパラメータによって構成されているとする生成文法の一つの見方です。このアプローチは、言語の普遍性と多様性を理解するための枠組みを提供し、言語獲得、特に文法の習得を、与えられた言語経験を通じてパラメータを設定していく過程として捉えています。この理論の主な目的は、自然言語に共通する全ての原則やパラメータを特定し、それらがどのように普遍文法を形成するかを明らかにすることです。

特に、言語獲得の過程において、「刺激の貧困」にもかかわらず、子供たちがどのように迅速に母国語の複雑な文法を習得できるのかという「プラトンの問題」に対する答えを追求しています。普遍文法（UG）は、人間が持つ生物学的な言語能力の一部であるとされ、言語経験によってパラメータが特定の値にセットされる役割を果たすと考えられています。特に、Mussoら（2003）のfMRI研究は、UGの原則に沿った言語のルールを学ぶ際に人間の脳のブローカ野が特に活性化する様子を示しています。

歴史

この理論は、1967年にノーム・チョムスキーが下接の条件を提案した際に始まりました。この条件は、文中の移動が二つ以上の境界節点を越えることができないという原則です。例えば、英語での非文法構造は、移動する要素が二つの境界を越えるために生じたものと説明されます。

1982年には、ルイージ・リッツィがイタリア語における同様の構造について、境界節点がパラメータとして機能することを提案し、初めてパラメータを用いた新たなアプローチを意味しました。この背景には、言語間の差異を認識し、それを解決しようとする姿勢が見受けられます。

1980年代には、統率・束縛理論（GB理論）が主流として確立されました。この理論は、文法を複数の下位理論の相互作用によるものとして捉え、主要なモジュールにはさまざまな文法的原則が組み込まれています。この時期、ハギット・ボーラーが提唱した語彙的パラメータ化仮説は、言語間の変異の説明に向けた重要な進展とされました。

極小主義におけるパラメータ

1990年代初頭には、ミニマリスト・プログラム（MP）が登場しました。これは、P&PやGB理論の複雑さに対し、より簡潔で深い説明を追求するもので、変異の主な根源は機能的語彙の素性の差にあるとされました。この理論では、D構造やS構造が排除され、必要なインターフェースレベルの音形と論理形式だけが重要視されました。

批判

このP&Pアプローチは影響力を持つ一方で、いくつかの批判も受けています。特に、提案されたパラメータの多さや、パラメータが言語の変異を適切に説明しないという問題が挙げられています。フレデリック・ニューマイヤーによる批判では、パラメータ設定が必ずしも記述的な単純性をもたらさず、数も多くなるばかりである期待に反しているとの指摘がなされました。

さらに、パラメータの役割については、ミニマリスト・プログラム自身も批判を受ける場面があり、理論内部での合意が形成されていないのが現状です。また、過度に抽象的で経験的データからの検証が難しいとされるこの理論は、機能主義の視点からも挑戦を受けています。

このように、原理とパラメータのアプローチは、言語科学における重要な理論とされながらも、批判や誤解を引き起こしつつ進化しており、今後の研究においても重要な議論の一端を担うことが期待されています。

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