原田尚美

原田尚美：日本の地球科学をリードする女性研究者

1967年生まれの原田尚美氏は、日本の地球科学界を代表する女性研究者です。専門は生物地球化学と古海洋学で、その卓越した研究成果とリーダーシップにより、国内外で高い評価を得ています。特に、南極地域観測隊の隊長に女性として初めて就任したことは、大きな注目を集めました。

北海道から世界へ：研究者としての歩み

北海道帯広市生まれ、苫小牧市育ちの原田氏は、北海道苫小牧東高等学校を経て、1989年に弘前大学理学部地球科学科を卒業。その後、中学校と高等学校の理科教員免許を取得し、文部技官として第33次南極地域観測隊に参加します。この時の経験が、彼女の人生を大きく方向付けることになります。

1991年には名古屋大学大学院理学研究科に進学し、大気水圏科学専攻で博士号を取得。大学院在学中は、指導教官である半田暢彦氏とともに白鳳丸を用いた太平洋赤道航海に参加し、海底堆積物の採取を行いました。この経験から、地球科学研究への強い情熱を確信し、企業への就職を断って研究の道へ進むことを決意します。

海洋研究開発機構での活躍

1995年、海洋科学技術センター（現・海洋研究開発機構）深海研究部むつ研究所研究員としてキャリアをスタートさせます。その後、地球環境観測研究センター、地球環境変動領域などで、研究活動に邁進。2004年には地球温暖化情報観測研究プログラムのサブリーダー、2009年には古海洋環境研究チームのチームリーダーを歴任しました。

2014年には、海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター長代理に就任し、同時に海洋生態系動態変動研究グループのグループリーダーも務めます。さらに、日本地球惑星科学連合理事にも就任するなど、研究活動と組織運営の両面で重要な役割を担っていました。

南極への挑戦：女性初の隊長

2017年には第60次南極地域観測隊の副隊長兼夏隊長として南極観測に参加。そして2023年、第66次南極地域観測隊隊長に就任。南極地域観測隊の隊長に女性が就任するのは、これが初めての快挙となります。彼女のリーダーシップと経験が、日本の南極観測を新たな段階へと導くことが期待されています。

学会活動と受賞歴

研究活動に加え、学会活動にも積極的に参加しています。2016年には地球環境史学会貢献賞を受賞。2017年には地球環境史学会会長、日本地球化学会副会長などを歴任。2018年には情報・システム研究機構国立極地研究所客員教授に就任しました。また、2024年には日本地球惑星科学連合副会長に就任するなど、日本の地球科学界において重要な役割を担っています。

東京大学での教授職

2022年には東京大学大気海洋研究所附属国際・地域連携研究センター教授に就任。現在も第一線で研究を続け、後進の育成にも力を入れています。

まとめ

原田尚美氏の経歴は、日本の女性科学者の道を切り開いた、素晴らしい軌跡です。研究活動、組織運営、そして南極観測隊隊長としての経験は、未来の科学者たちにとって大きな刺激と勇気を与えるものとなるでしょう。今後の活躍にも期待が高まります。

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