原田種成 (漢文学者)

原田 種成（はらだ たねしげ）は、日本の漢文学者であり、長年にわたり教育と研究に尽力し、特に大東文化大学の発展に貢献した功績から、同大学より名誉教授の称号を贈られた人物です。号は臧軒（ぞうけん）と称しました。

[1911年]]（明治44年）1月2日、東京の地で生を受けました。幼少期から青年期を東京で過ごし、学問への道を志しました。後に、東洋文化の研究を特色とする[大東文化学院の高等科で学び、その専門教育の課程を修了しました。この大東文化学院での学びが、その後の漢文学者としてのキャリアの礎となりました。

教育者としての歩みは、まず群馬師範学校（現在の群馬大学教育学部の前身の一つ）の[教授]]として始まりました。地方における中等教育の教員養成に携わった後、首都圏の[国士舘大学へ移り、ここでも教鞭を執りました。これらの教育機関での経験は、多様な学生に漢文の魅力を伝え、古典研究の重要性を説く機会となりました。

学術研究においては、特に中国古典に関する深い探求を進めました。その集大成の一つが、[1960年]]に[法政大学に提出された学位論文『本邦伝来の貞観政要の研究』です。この研究によって、権威ある文学博士の学位を取得しました。

『[貞観政要]]』は、中国唐代の第二代皇帝である[太宗)（李世民）が、宰相である魏徴ら臣下と交わした政治や統治に関する問答をまとめた書物であり、全10巻40篇から構成されています。古くから理想的な君主像や為政者の手本、あるいは政治哲学の古典として、東アジア各国に大きな影響を与えてきました。日本にも早くから伝来しており、奈良時代には既に朝廷で読まれていた記録があります。平安時代以降も、歴代の為政者や学者によって深く読まれ、日本の政治思想や文化に多大な影響を与えました。原田氏の研究は、特に「本邦伝来」という点に焦点を当てており、日本に伝わった『貞観政要』の様々なテキストの系統や変遷、そしてそれが日本の思想や政治にどのように受容され、影響を与えたかを実証的に明らかにしたものと推測されます。このような研究は、単に中国古典を理解するだけでなく、日本独自の文化や思想がいかに形成されてきたかを探る上で極めて重要な意味を持ちます。

1970年からは、自身の母校である大東文化学院を源流とする大東文化大学の教授として迎えられました。大東文化大学は、その名の通り東洋の文化、特に漢学研究において、長きにわたる伝統と確固たる実績を持つ学府として知られています。原田氏は、この場で自身の専門である漢文学の研究をさらに深めつつ、教育者として未来を担う多くの学生たちの指導にあたりました。古典文学、思想史、文献学といった多岐にわたる分野で、講義やゼミを通して中国古典の厳密な読解法や、その思想的背景、歴史的文脈を伝えることに情熱を注ぎました。

1985年、長年にわたる教育・研究活動に一区切りをつけ、大東文化大学を定年退職しました。その永年にわたる教育及び学術研究への貢献を讃えられ、同大学より名誉教授の称号を贈呈されました。退職後も、名誉教授として大学との関わりを保ちつつ、研究活動を継続した可能性も考えられます。

教育・研究活動の傍ら、著作活動にも精力的に取り組み、その研究成果は複数の著書や論文として世に問われました。（具体的な著書名が不明のため、この記述に留める）

1995年（平成7年）1月29日、十二指腸がんのため、療養していたと考えられる前橋市内の病院で永眠しました。享年84歳でした。

原田種成氏は、日本の漢文学界において、特に『貞観政要』という重要な古典の日本における受容と研究史に光を当てた研究者として、また群馬師範学校、国士舘大学、そして大東文化大学といった教育機関で長く教鞭を執り、多くの後進を育て、漢文教育の普及と発展に貢献した教育者として、その名を記憶されるべき人物です。その生涯は、東洋の古典に対する深い敬愛と、次世代への知識の継承に捧げられました。

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