参天台五台山記

『参天台五臺山記』（さんてんだいごだいさんき）は、平安時代後期の僧侶である成尋（じょうじん）によって著された、11世紀後半の中国大陸への旅行記です。全8巻で構成されており、当時の北宋における仏教の状況を詳細に記録した貴重な文献として知られています。

この旅行記は、成尋が1072年（延久4年）に日本を出発し、中国の天台山や五台山といった仏教の聖地を巡礼した際の記録です。成尋は、これらの山々での参拝の様子や、そこで見聞した寺院や僧侶たちの様子を詳細に記述しています。

特に重要な点として、成尋は北宋の皇帝、神宗（しんそう）に謁見したことが記録されています。この謁見の様子や、皇帝とのやり取りは、当時の中国における仏教と政治の関係を知る上で、非常に貴重な情報を提供してくれます。

『参天台五臺山記』は、約230年前に同じく僧侶である円仁（えんにん）によって著された『入唐求法巡礼行記』と並び、北宋時代の仏教事情を知るための重要な資料とされています。円仁の旅行記が唐代の仏教事情を伝えているのに対し、成尋の旅行記は北宋時代の仏教の実態を生き生きと伝えており、両者を比較することで、時代による仏教の変化を考察することも可能です。

この旅行記の研究は、齋藤圓眞（斎藤円真）氏による『参天台五臺山記』全4巻、藤善真澄氏による『参天台五臺山記』（上下）、および『参天台五臺山記の研究』、森公章氏による『成尋と参天台五臺山記の研究』など、多くの研究者によって進められています。これらの研究により、『参天台五臺山記』の内容はさらに深く理解され、歴史研究における重要な資料としての地位を確立しています。

成尋の旅は、単なる巡礼の旅ではなく、当時の日本と中国の文化交流の一端を示すものであり、仏教史研究のみならず、東アジアの歴史や文化を理解する上でも、欠かすことのできない資料となっています。

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