円仁

円仁（えんにん）について

円仁は、仏教界で重要な役割を果たした第3代天台座主で、慈覚大師とも呼ばれています。彼は、天台宗の教えを広めるために様々な困難に立ち向かい、特に唐への渡航が大きな意義を持つ人物です。

生い立ちと初期の修行

円仁は、延暦13年（794年）に下野国の豪族である壬生氏の子として生まれました。彼の出生地については諸説あり、壬生寺や美加保ノ関、三毳山東麓手洗窪などが候補として挙げられています。兄の秋主から儒学を教えられましたが、円仁は早くから仏教に関心を寄せ、9歳で大慈寺に入り修行を始めます。

彼は、広智という師の指導を受け、15歳で比叡山延暦寺に上がり、最澄に師事しました。円仁は、奈良仏教や真言密教の影響が強い中で天台宗の確立に努め、最澄の愛弟子として多くの修行に励みました。

唐への留学と天台山の旅

承和3年（836年）に最初の唐への渡航が試みられましたが、失敗に終わります。翌年の承和4年、再度の挑戦も果たせず、承和5年にようやく博多を出港。彼の記した日記『入[[唐求法巡礼行記]]』によれば、志賀島を経て揚州へと無事に渡海することができました。

しかし、唐へ渡った円仁は目指す天台山へ行くことができず、規制の厳しい中で不法滞在を決意し、若い僧敬文に助けられました。彼は、唐の地で五台山を新たな目標とし、約1270キロ[[メートル]]を徒歩で移動し、五台山巡礼を成功させます。ここで、未解決だった法華経と密教の問題に対する答えを得て、およそ37巻の仏典を持ち帰ります。

長安への旅と帰国

五台山から長安への旅は約53日間にわたり、文化の中心地での学びは円仁にとって大変貴重な経験となりました。彼はこの地で多くの仏典を書写し、また金剛界曼荼羅を得ることもできました。しかし、唐朝の異変が起こり、円仁は帰国を望むもなかなか許可が下りませんでした。

最終的には、帰国が叶ったのは会昌2年（842年）で、長安の混乱を経て新羅商人のもとで艦船に乗り込み日本へ向かいます。途中、長い間支えてくれた人々からの温かい送別を受け、日本に帰国した際には豊富な経典や知識を携え帰還しました。

帰国後の活動

円仁は帰国後、目黒不動として知られる瀧泉寺や、立石寺、瑞巌寺など多くの寺を開祖・再興しました。また、彼は仏教の教えを広め、特に密教の発展に寄与しました。彼の名声は多くの僧侶に影響を与え、後に円仁派として知られる流派が形成され、長期にわたって寺門派と対立関係にありました。

最期と遺産

円仁は、仁寿4年（854年）に61歳で延暦寺座主に任命されました。彼の性格は円満で温かく、多くの信奉者がいました。円仁の足跡は仏教の発展に大きく寄与し、特に彼が書き綴った『入[[唐求法巡礼行記]]』は日本最古の旅行記として高く評価されています。現代でも彼の教えや業績は多くの研究者によって取り上げられ、多くの人々に影響を与え続けています。

円仁の人生は、仏教の発展と日本と中国の文化交流の架け橋となり、彼の信念と努力は永遠に受け継がれています。

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