友人葬

友人葬（ゆうじんそう）

友人葬とは、僧侶を招かず、故人と生前親交のあった人々、すなわち遺族、親族、友人などが主体となって行う葬儀形式です。従来の仏式葬儀が僧侶による読経や儀式を中心に進められるのに対し、友人葬は故人と身近な人々によって、より直接的な形で故人を偲び、見送る点に特徴があります。

概要と歴史

この形式は、1991年（平成3年）に創価学会が日蓮正宗から独立したことを契機に、創価学会の会員の間で広く行われるようになりました。特定の宗派に属さない創価学会独自の葬儀儀礼として定着し、以後、会員の葬儀の主要な形式となっています。

儀式と費用

友人葬では、故人に戒名を授ける代わりに、生前の氏名である「俗名」を用います。これにより、僧侶への読経料やお布施といった謝礼は発生しません。読経は、方便品と自我偈の読誦に続き、唱題（「南無妙法蓮華経」を唱えること）という順序で行われます。これらの儀式は、創価学会の日常的な勤行・唱題会と共通する形式であり、参列者全員で声を合わせて行われるのが特徴です。葬儀においては、地域ごとに任命された創価学会の会員である儀典長が導師を務めますが、基本的には集まった人々自身の手で故人を弔います。

僧侶へのお布施が不要なため、弔いのための宗教的費用はかからないと言えます。ただし、祭壇の設置費用、遺体搬送のための専門業者や車両の手配、火葬に関する行政手続き費用など、葬儀そのものにかかる実費は別途必要となります。したがって、完全に無料で執り行えるわけではありません。

香典について

友人葬には、従来の葬儀における香典や香典返しの習慣がないことも、特徴の一つです。原則として参列者からの香典は不要とされており、遺族も香典を期待しないのが基本姿勢です。しかし、これはあくまで原則であり、参列者が自らの意思で香典を持参することは認められており、遺族がそれを受け取ることも問題ありません。近年では、創価学会の会員ではない一般の参列者が通常の慣習に従い香典を持参する機会が増え、それに伴い香典返しを行う遺族も見られるようになっています。

現代の友人葬

この香典不要という点は、身寄りのない方や特定の宗教を持たない無宗教者の方々が、葬儀の形式として友人葬を選択する要因となることもあります。また、近年、日本の葬儀事情は多様化しており、家族葬のように近親者のみで簡素に執り行われるケースが増加しています。こうした背景もあり、友人葬を受け付ける一般の葬儀社も多く見られるようになりました。

葬儀社によって提供されるサービス内容は異なり、基本料金に含まれる範囲や、オプションとして別途費用が発生する項目は様々です。料金体系は葬儀社や地域によって異なりますが、ウェブサイト上で詳細なオプション料金を明示していない業者も存在します。また、インターネットを通じて依頼する現代的な葬儀サービスの中には、従来の形式とは逆に、僧侶の派遣を有料オプションとするケースが主流となっています。そのため、あえて僧侶を招かない友人葬の形式は、こうしたオプションを希望しない利用者にとって、自然な選択肢の一つとなっています。

創価学会の見解

創価学会の元会長であり名誉会長の池田大作氏は、友人葬について公式な見解を示しています。その中で、葬儀に必ずしも僧侶を招く必要はないとしつつも、状況に応じて僧侶を呼びたいと希望する人がいれば、そうすることも妨げないという柔軟な姿勢を示しています。この見解は、友人葬が基本的な形式でありながらも、個々の状況に応じた対応を許容するものであることを示唆しています。

総じて、友人葬は創価学会の信仰に基づく葬儀形式でありながら、現代の多様な葬儀ニーズ、特に簡素化や宗教色の希薄化を求める層にも対応しうる特徴を持つ形式と言えます。

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