戒名

戒名 (かいみょう)とは

戒名は、仏教において戒を守ることを誓った者に与えられる特別な名前です。この名前は、仏門に入った証であり、戒律を遵守している証拠でもあります。戒名の授与は、上座部仏教や大乗仏教の両方で行われており、通常、出家修道者に対して授戒の師僧によって付けられます。

上座部仏教における戒名の意義

上座部仏教では、戒名は出家後に授けられ、その由来は南伝仏典に残る阿羅漢の名前から取られます。これゆえ、戒名は「法名 (Dharma name)」とも呼ばれます。ここでの戒名の授与は、沙弥戒（十戒）を初めて受ける際に行われ、古い俗名は捨てられるとされています。

中国における戒名の変遷

仏教が中国に伝わる過程で、戒名も同時に広まりました。しかし、元々サンスクリットやパーリであったこれらの名前が、適切に中国語に訳される必要がありました。そのため、竺法護や真諦といった中国風の戒名が誕生しました。一部の研究者は、中国の号制度の影響を受けて、中国風の戒名が生成されたと述べています。中国ではこれが「法諱 (ほうい)」と呼ばれ、新たに身につける真の名前という意義も持っています。

釋氏制度の形成

現在、中国の僧侶が名乗る際には「釋」を用いた名前が一般的です。これは、初期の仏教徒が地域を姓として用いていたのに対して、釈道安が師の弟子ではなく釈尊の弟子であると強調したことから来ています。このため、多くの僧侶が「釋」と名乗るようになりました。

日本における戒名の伝来

日本には仏教と共に戒名の概念が伝わりました。特に平安時代末期からは、死後に成仏するという考えが広まり、故人に戒名を与えることで、死後の安寧を祈る文化が浸透しました。この習慣は、日本特有のもので、他の仏教国には見られません。

法名と法号の違い

特に浄土真宗では、「戒名」という表現ではなく「法名」という名称が使われます。一方、日蓮宗や法華系の仏教宗派では、これを「法号」と称し、必ず「日号」を付けるルールがあります。

現代における戒名の授与

現在、戒名は葬儀時に授与されることが多いですが、宗派によっては生前に授戒会や五重相伝会などの法要に参加した信徒にも授与されることがあります。多くの場合、戒名は2字で構成され、身分や熱心さに関係なく平等であることが表現されています。

戒名の構成とその意義

戒名は通常、院号、道号、戒名、位号の順で構成されています。例えば、具体的な名前の例を挙げると「ＯＯ院△△ＸＸ居士」などで、ここで「ＯＯ」は院号、「△△」は道号、「ＸＸ」は戒名、「居士」は位号です。また、浄土真宗においては、「釈ＸＸ」という形式が用いられ、自身が仏教徒であることを示します。

位号の多様性

戒名には「信士」や「居士」、「大姉」といった位号があり、これは故人が生前においてどのような業績や貢献をしていたかに基づいて変化します。なお、律宗や浄土真宗では位号は必ずしも用いられません。

戒名の社会的な意味

戒名はその人の生前の状況や信仰に応じて与えられ、信仰が深い人には「大居士」や「清大姉」といった特別な戒名が付けられる場合もあります。このように、戒名は単なる名前にとどまらず、人の人生や信仰の大切な証となっています。

差別的な戒名の問題

近世においては、被差別部落出身者に対して差別的な表現が含まれる戒名が授与されることもありました。これに対する抗議や再調査が行われています。一方、近年では、戒名に対するお布施の価格基準が議論され、布施に定価があるべきではないとの意見も存在します。

このように、戒名は仏教における重要な伝統であり、文化や宗派によって様々な形で尊ばれています。日本の戒名の制度は特に他の国々には見られない独自の文化を形成しています。

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