友部正人
友部正人（ともべ まさと）は、1950年5月25日生まれの日本のフォークシンガーであり、詩人です。本名は小野正人。
東京都下の吉祥寺で、青森県出身の父のもとに生まれた友部正人は、幼少期から各地を転々としました。愛知県立熱田高等学校時代には、友人たちとビートルズのコピーバンドでベースを担当。その後、ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」に衝撃を受け、自らソングライティングを始めるようになりました。ウッディ・ガスリーやレッドベリーのように、人々の感情を歌うスタイルを日本で実現したいと考え、高校卒業と同時に家を飛び出し、路上で歌い始めます。
やがて学生運動に参加し、火炎瓶を投げるなどの活動を行ったため、鑑別所に入れられる経験もしました。1960年代末には、名古屋から大阪に移住。西岡恭蔵、大塚まさじらと出会い、高田渡を通じて喫茶店や古書店で詩集を読む生活を送ります。1969年には京都フォークキャンプに参加し、1971年には中津川フォークジャンボリーで、シバ、岩井宏、いとうたかお、山本コウタローらと武蔵野タンポポ団のセッションに参加しました。
1972年、『大阪へやって来た』でデビュー。1973年には代表作と言われる『にんじん』、『また見つけたよ』をリリース。同年、美輪明宏のコンサートにゲスト出演し、共演を果たします。半年間のアメリカ放浪を経て帰国後、1975年には坂本龍一がピアノで参加した『誰もぼくの絵を描けないだろう』（「おしゃべりなカラス」収録）を発表。1976年、スカイドッグ・ブルースバンドをバックにレコーディングした『どうして旅に出なかったんだ』は、収録曲「びっこのポーの最後」の歌詞に差別的表現があるとして回収の憂き目に遭いましたが、その後も独自の音楽活動を続けました。
1980年に『なんでもない日には』、1981年に「びっこのポーの最後」の新録版を含む『どうして旅に出なかったんだ』を『1976』と改題して自主リリース。1983年には『ポカラ』、1984年には『カンテ・グランデ』をリリースしています。
1990年代には、たまとのセッションアルバム『けらいのひとりもいない王様』や、矢野誠とのコラボ『雲のタクシー』を発表。この頃からニューヨークに頻繁に訪れるようになり、デイヴ・ヴァン・ロンクにギターを習いました。また、ポエトリー・リーディングや『北海道新聞』でのエッセイ連載など、多岐にわたる活動を展開しました。
友部正人は、「お客さんにはステージを見ずに目を閉じて聴いていてほしい」と語るなど、独特な感性を持っています。また、ライブ後のサイン会では、「お客さんの自己紹介より歌の感想を聞きたい」と述べています。彼の作品は、現代人の心理状態を分かりやすい言葉で表現し、聴く者の心に深く響きます。例えば、「ひとり部屋にいて」では引きこもりの青年を、「どうして旅に出なかったんだ」では、場所についての考えを三人の人物を使って表現しています。また、「熱くならない魂をもつ人はかわいそうだ」や「Speak Japanese, American」など、聴衆に問いかけるような作品も多くあります。
谷川俊太郎をはじめ、多くの詩人や文化人からも高く評価されており、田村隆一、金子光晴からの影響を受けているとされています。また、田中研二、豊田勇造、高田渡、金子光晴、長井勝一といった実在の人物をモチーフにした楽曲も多く作っています。
独特な倫理観を持ち、先輩を呼び捨てにし、後輩には「さん」付けするなど、独自の基準を持っています。井上陽水は、この点について「名前の通り、ずっと正しい人だ」と評価しています。また、アメリカに追従する政治やマスコミに対して批判的な姿勢を持っており、詩にもその思いが表現されています。
マラソンを趣味としており、ニューヨークと日本を行き来する生活を送っていましたが、2016年に日本に定住。ニューヨークシティ[[マラソン]]には、高齢になっても毎年参加し、完走しています。
パンとビール、コーヒーを愛し、それらは彼の歌詞にも度々登場します。メディア露出は少ないものの、長渕剛、真島昌利、寺岡呼人、佐野元春、宮沢和史、森山直太朗、双葉双一といった多くのミュージシャンに影響を与えています。
同じ年に生まれ、名前の似ている友川カズキとは、詩的な要素の強い歌手として並び称されることがあります。共に中原中也に影響を受け、友川が中原の詩のみで構成されたアルバムを制作した際には、友部が「中原中也、失われた声」という文章を寄稿しました。しかし、音楽への興味の入り口は異なり、友川が中原の詩から音楽へ入ったのに対し、友部はディランの音楽から詩に向かっていったと述べています。
音楽作品以外にも、詩集やエッセイ集、絵本など、多彩な作品を発表しています。
主な作品は以下の通りです。
オリジナルアルバム: 『大阪へやって来た』『誰もぼくの絵を描けないだろう』『ポカラ』『カンテ・グランデ』など。
ベストアルバム: 『友部正人'72〜'74』『ベスト・セレクション』『少年とライオン』『イタリアの月』など。
ライブアルバム: 『はじめぼくはひとりだった』『ぼくの展覧会』『ブルースを発車させよう』など。
コラボレーションアルバム: 『けらいのひとりもいない王様』『雲のタクシー』『ロックンロール、やってます』など。
詩集: 『おっとせいは中央線に乗って』『名前のない商店街』『空から神話の降る夜は』『すばらしいさよなら』『夜中の鳩』など。
エッセイ集: 『ちんちくりん』『生活が好きになった』『パリの友だち』『耳をすます旅人』など。
友部正人は、その独特な世界観と人間味あふれるキャラクターで、多くの人々を魅了し続けています。彼の作品は、時代を超えて、聴く者の心に深く響き、共感を呼び起こします。
生い立ちと音楽活動の開始
東京都下の吉祥寺で、青森県出身の父のもとに生まれた友部正人は、幼少期から各地を転々としました。愛知県立熱田高等学校時代には、友人たちとビートルズのコピーバンドでベースを担当。その後、ボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」に衝撃を受け、自らソングライティングを始めるようになりました。ウッディ・ガスリーやレッドベリーのように、人々の感情を歌うスタイルを日本で実現したいと考え、高校卒業と同時に家を飛び出し、路上で歌い始めます。
学生運動と音楽活動
やがて学生運動に参加し、火炎瓶を投げるなどの活動を行ったため、鑑別所に入れられる経験もしました。1960年代末には、名古屋から大阪に移住。西岡恭蔵、大塚まさじらと出会い、高田渡を通じて喫茶店や古書店で詩集を読む生活を送ります。1969年には京都フォークキャンプに参加し、1971年には中津川フォークジャンボリーで、シバ、岩井宏、いとうたかお、山本コウタローらと武蔵野タンポポ団のセッションに参加しました。
デビューと音楽性の確立
1972年、『大阪へやって来た』でデビュー。1973年には代表作と言われる『にんじん』、『また見つけたよ』をリリース。同年、美輪明宏のコンサートにゲスト出演し、共演を果たします。半年間のアメリカ放浪を経て帰国後、1975年には坂本龍一がピアノで参加した『誰もぼくの絵を描けないだろう』（「おしゃべりなカラス」収録）を発表。1976年、スカイドッグ・ブルースバンドをバックにレコーディングした『どうして旅に出なかったんだ』は、収録曲「びっこのポーの最後」の歌詞に差別的表現があるとして回収の憂き目に遭いましたが、その後も独自の音楽活動を続けました。
1980年に『なんでもない日には』、1981年に「びっこのポーの最後」の新録版を含む『どうして旅に出なかったんだ』を『1976』と改題して自主リリース。1983年には『ポカラ』、1984年には『カンテ・グランデ』をリリースしています。
1990年代以降の活動
1990年代には、たまとのセッションアルバム『けらいのひとりもいない王様』や、矢野誠とのコラボ『雲のタクシー』を発表。この頃からニューヨークに頻繁に訪れるようになり、デイヴ・ヴァン・ロンクにギターを習いました。また、ポエトリー・リーディングや『北海道新聞』でのエッセイ連載など、多岐にわたる活動を展開しました。
人物像と音楽的特徴
友部正人は、「お客さんにはステージを見ずに目を閉じて聴いていてほしい」と語るなど、独特な感性を持っています。また、ライブ後のサイン会では、「お客さんの自己紹介より歌の感想を聞きたい」と述べています。彼の作品は、現代人の心理状態を分かりやすい言葉で表現し、聴く者の心に深く響きます。例えば、「ひとり部屋にいて」では引きこもりの青年を、「どうして旅に出なかったんだ」では、場所についての考えを三人の人物を使って表現しています。また、「熱くならない魂をもつ人はかわいそうだ」や「Speak Japanese, American」など、聴衆に問いかけるような作品も多くあります。
谷川俊太郎をはじめ、多くの詩人や文化人からも高く評価されており、田村隆一、金子光晴からの影響を受けているとされています。また、田中研二、豊田勇造、高田渡、金子光晴、長井勝一といった実在の人物をモチーフにした楽曲も多く作っています。
独特な倫理観を持ち、先輩を呼び捨てにし、後輩には「さん」付けするなど、独自の基準を持っています。井上陽水は、この点について「名前の通り、ずっと正しい人だ」と評価しています。また、アメリカに追従する政治やマスコミに対して批判的な姿勢を持っており、詩にもその思いが表現されています。
マラソンを趣味としており、ニューヨークと日本を行き来する生活を送っていましたが、2016年に日本に定住。ニューヨークシティ[[マラソン]]には、高齢になっても毎年参加し、完走しています。
パンとビール、コーヒーを愛し、それらは彼の歌詞にも度々登場します。メディア露出は少ないものの、長渕剛、真島昌利、寺岡呼人、佐野元春、宮沢和史、森山直太朗、双葉双一といった多くのミュージシャンに影響を与えています。
同じ年に生まれ、名前の似ている友川カズキとは、詩的な要素の強い歌手として並び称されることがあります。共に中原中也に影響を受け、友川が中原の詩のみで構成されたアルバムを制作した際には、友部が「中原中也、失われた声」という文章を寄稿しました。しかし、音楽への興味の入り口は異なり、友川が中原の詩から音楽へ入ったのに対し、友部はディランの音楽から詩に向かっていったと述べています。
多岐にわたる作品群
音楽作品以外にも、詩集やエッセイ集、絵本など、多彩な作品を発表しています。
主な作品は以下の通りです。
オリジナルアルバム: 『大阪へやって来た』『誰もぼくの絵を描けないだろう』『ポカラ』『カンテ・グランデ』など。
ベストアルバム: 『友部正人'72〜'74』『ベスト・セレクション』『少年とライオン』『イタリアの月』など。
ライブアルバム: 『はじめぼくはひとりだった』『ぼくの展覧会』『ブルースを発車させよう』など。
コラボレーションアルバム: 『けらいのひとりもいない王様』『雲のタクシー』『ロックンロール、やってます』など。
詩集: 『おっとせいは中央線に乗って』『名前のない商店街』『空から神話の降る夜は』『すばらしいさよなら』『夜中の鳩』など。
エッセイ集: 『ちんちくりん』『生活が好きになった』『パリの友だち』『耳をすます旅人』など。
友部正人は、その独特な世界観と人間味あふれるキャラクターで、多くの人々を魅了し続けています。彼の作品は、時代を超えて、聴く者の心に深く響き、共感を呼び起こします。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。