双十節事件

双十節事件（そうじゅうせつじけん）

事件の概要

1943年10月10日（双十節）以降、日本軍が占領していた昭南特別市（現在のシンガポール）で発生した事件です。同年9月に発生した昭南港爆破事件をきっかけに、昭南憲兵隊は連合国捕虜が事件に関与したと疑い、英国人や中国人などの上流階級の人々を50人以上逮捕しました。彼らは拷問や虐待を受け、その結果、15人が命を落としたとされています。この事件は、戦後、イギリス軍シンガポール裁判で裁かれ、昭南憲兵隊の関係者8人が絞首刑となる判決が下されました。

昭南港爆破事件

事件の発端となったのは、1943年9月27日に昭南港で発生した輸送船とタンカー7隻が爆破、沈没した事件です。日本軍は直ちに大規模な捜索を行いましたが、犯行に繋がる証拠は見つかりませんでした。警備隊と憲兵隊は、シンガポールに残っていたスパイが事件に関与したと考え、以前から「要注意人物」としてマークしていたユーラシア人や華僑の住民を次々と検挙し、取り調べました。この過程で、1000人を超える市民が憲兵隊に逮捕されました。

双十節事件の発生

昭南憲兵隊は、収容されていた英国人が事件の首謀者であるという内部情報に基づき、サイム路にあった連合国人収容所への強制捜査を開始しました。短波ラジオを隠し持っていた者が逮捕され、拷問を受けましたが、誰も犯行を認めませんでした。その後も憲兵隊は何度も収容所を捜索し、1943年10月10日から1944年4月2日までの間に、57名の連合国人を逮捕し、拷問を加えました。その結果、15名が拷問によって命を落としました。現在では、昭南港爆破事件は、オーストラリアなどにいた英豪軍関係者によって計画されたもので、収容所にいた人々は全く無関係であり、自白することも不可能だったと考えられています。

この収容所には、旧イギリス政府の高官や牧師など、多くの著名人が収容されていました。シンガポール統治の三役とされた総督、大僧正、極東情報局長のうち、大僧正と極東情報局長のスコットも虐待の被害者となりました。スコット極東情報局長は、辛うじて拷問死を免れました。

最終的に、日本軍はこの事件で100人もの英国人を逮捕し、そのうち30人が裁判にかけられました。1人が死刑判決を受け、15人が3年から15年の有期刑を宣告されました。また、容疑者のうち1人が自殺し、3人が病死しています。さらに、犯人に隠れ家や食料を提供したとして、100人近いマレー人も逮捕されました。

戦犯裁判

戦後、イギリス軍シンガポール裁判において、憲兵隊による拷問致死が戦争犯罪と認定されました。昭南憲兵隊の憲兵分隊長であった住田中佐以下21名が起訴され、住田隊長を含む8名が絞首刑に処せられました。

参考文献

林博史『シンガポール華僑粛清』高文研、2007年。
遠藤雅子『シンガポールのユニオンジャック』集英社、1996年。
岩川隆『孤島の土となるとも－BC級戦犯裁判』講談社、1995年。
東京裁判ハンドブック編集委員会（編）『東京裁判ハンドブック』青木書店、1989年。
篠崎護『シンガポール占領秘録－戦争とその人間像』原書房、1976年。

関連項目

昭南港爆破事件
シンガポールの歴史
日本とシンガポールの関係
日本の戦争犯罪一覧
BC級戦犯
* 南十字星 (映画)

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