受動光ネットワーク

受動光ネットワーク（PON）とは

受動光ネットワーク（PON: Passive Optical Network）は、1本の光ファイバーを複数の加入者で共有するために使用される光信号多重化技術です。ネットワーク構成に着目すると、PDS（Passive Double Star）と呼ばれることもあります。

概要

PONは、通信事業者側の終端装置（OLT: Optical Line Terminal）、電柱などの光クロージャ内に設置される光スプリッタ、そして加入者側の光ネットワークユニット（ONU: Optical Network Unit）で構成されます。

光ファイバーの分岐に使用される光スプリッタは、受動素子（光学部品）を使用しているため、小型で電源が不要という特徴があります。これは、SS（Single Star）方式と比較すると、光ファイバーやOLTを複数加入者で共有できるため、物理コストを削減し、回線使用効率を向上させることが可能です。また、AON（Active Optical Network）方式と比較すると、OLTやONUはやや高価で複雑になるものの、スプリッタを無電源、小型、かつメンテナンスフリーにできるため、システム全体としてコストを抑えられます。

技術

PONでは、時分割多重（TDM）、時分割多元接続（TDMA）、波長分割多重（WDM）、光符号分割多重（OCDM）などの多重化技術や、動的帯域制御（DBA: Dynamic Bandwidth Allocation）を用いて、信号を効率的に伝送しています。

石英系光ファイバーの伝送特性から、使用される波長帯域は主に1,200nm帯（Oバンド）から1,500nm帯（Lバンド）です。

OLTから下り方向の通信は、光ファイバーを共有する全てのONUに届きます。ONUはパケットのヘッダーを参照し、自分宛のパケットのみを受信する仕組みになっています。ただし、宛先情報を詐称することで他のONU宛のデータが傍受される可能性があるため、上位レイヤーでMACsec（IEEE 802.1AE）などの暗号化技術を用いてデータを保護しています。

主な規格

PONの主な規格には、欧米の通信事業者やベンダーが結成したFSAN（Full Service Access Network）とITU（国際電気通信連合）が共同で制定した規格、そしてIEEE（米国電気電子学会）が制定した規格の2種類があります。

一般的に使用される略称を以下に示しますが、実際には「GE-PON」が「GEPON」や「G-EPON」と表記されるなど、ハイフンが省略されたり、位置が異なる表記も用いられることがあります。

ITU-T G.983: Broadband PON (BPON)
ITU-T G.984: Gigabit PON (GPON)
IEEE 802.3ah: Ethernet PON (EPON)
IEEE 802.3av: 10 Gigabit Ethernet PON (10GE-PON)

まとめ

PONは、光ファイバーを効率的に共有し、コスト削減と回線効率向上を実現する重要な技術です。多重化技術や暗号化技術を活用することで、高速かつ安全な通信環境を提供しています。FTTH（Fiber To The Home）などの光回線サービスにおいて、このPON技術が広く活用されています。

関連項目

FTTH
光回線終端装置

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