受容体型チロシンキナーゼ

受容体型チロシンキナーゼ (RTK)

受容体型チロシンキナーゼ（RTK）は、細胞表面に存在し、多くの成長因子やホルモンに対して高い親和性を持つ受容体の一群です。ヒトの遺伝子の中からは90種類のチロシンキナーゼが確認され、そのうち58種類がRTKとして機能しています。これらは細胞の正常な機能を調節するだけでなく、さまざまながんの発生や進行にも大きな影響を与えることが知られています。RTKの異常や変異は細胞内部でのシグナル伝達を乱し、それによって細胞の挙動が変わることがあります。

RTKの構造と機能

RTKは、基本的には単一のサブユニットから成る受容体ですが、一部は二量体または多量体の形態をとることもあります。例えば、インスリン受容体はジスルフィド結合により、インスリンが存在しない状態でも二量体を形成します。RTKの構造は、大きく分けて細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインに分かれています。特に細胞外ドメインには、リガンドと呼ばれる結合分子が結びつくための特定のドメインが含まれており、これにより受容体の活性化が促されます。

シグナル伝達とキナーゼ活性

RTKがリガンドと結合すると、他のRTKと二量体化し、それが発信するシグナルによって細胞内のチロシン残基が迅速にリン酸化されます。このリン酸化反応により、特定のシグナル伝達経路が活性化し、細胞の増殖や分化に寄与します。また、RTKの基質には、リン酸化を受ける自身のチロシン残基が含まれます。このリン酸化は多様な生物学的過程を調整するため、RTKががんやその他の疾患に関与していることが明らかにされています。

RTKファミリーの種類

RTKにはいくつかのファミリーが存在し、それぞれに異なる機能を持つ受容体があります。

EGF受容体ファミリー

上皮成長因子受容体（EGFR）ファミリーは、4つの構造で関連づけられたRTKから構成され、神経変性疾患やがんに関与しています。

FGF受容体ファミリー

線維芽細胞増殖因子受容体（FGFR）は、23種類以上のメンバーが存在し、細胞増殖に関与します。

VEGF受容体ファミリー

血管内皮細胞増殖因子（VEGF）は、血管透過性を調節する重要な因子であり、VEGFRを介して細胞に信号を伝えます。

RET受容体ファミリー

RETは、神経栄養因子との相互作用を通じて細胞内シグナル伝達を促進します。

Eph受容体ファミリー

エフリンと結びつくEph受容体はRTKの中でも最大のサブファミリーで、細胞の位置情報を調整します。

調節と治療ターゲット

RTKを介したシグナルは、細胞内外でのフィードバックループによって調整されています。がん治療においてRTKは注目されており、FDAによって承認されたさまざまな抗がん剤が、RTKのシグナル伝達を阻害することを目的に開発されています。特に、ハーセプチンは乳がんにおけるHER2の過剰発現をターゲットにした治療薬として広く利用されています。

受容体型チロシンキナーゼは、細胞のコミュニケーションの重要な役割を果たすとともに、様々な疾患の治療においても大きな可能性を秘めています。

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