古丁

古丁：満洲国を舞台に生きた作家の波乱万丈な生涯

古丁（ことう）は、満洲国時代に活躍した中国の小説家であり文学者です。本名は徐長吉（じょちょうきつ）、後に徐汲平と改名し、徐突微（じょとつび）という表記も用いていました。史之子（しのこ）という筆名も知られています。古丁の生没年については諸説あり、1914年9月29日～1964年説、1909年9月29日～1960年説、1916年9月29日～1964年説が存在します。

波乱に満ちた経歴

古丁は、吉林省長春県（または吉林市）で誕生しました。南満中学堂を卒業後、東北大学教育系に入学、後に北京大学中文系に転学したという記録が残っています。北京大学在学中は中国左翼作家連盟北方部に参加し、「科学新聞」社の左連小組にも所属していました。

1933年には、徐突微名義で北平左連常委会組織部長を務めた後、満洲国国務院法制局統計処に勤務。その後、国務院総務庁統計処統計官佐に任命され、満洲国政府において統計関連の業務に従事していました。

1937年には総合雑誌「明明」に参加し、古丁名で作品を発表開始。純文学誌へと転換した「明明」は、1938年に廃刊となりますが、古丁はその後も精力的に創作活動を行い、小松、爵青、疑遅らと芸文志事務会を結成し同人誌「芸文志」を発行。同誌は3期で休刊となりましたが、古丁の作品『平沙』は康徳6年度民生部大臣賞を受賞しました。翌年には、『奮飛』が第4回文芸盛京賞を受賞しています。

満洲国の行政機関での職務の傍ら、古丁は文芸活動に尽力し、満洲文話会の代表として来日したこともありました。しかし、1940年には新京ペスト騒動に巻き込まれ、隔離施設に収容されるという出来事も経験しています。満洲文芸家協会委員に就任、講演会講師を務めた後、1941年に職を辞して書店兼出版社である芸文書房を設立。建国大学で教鞭をとったという説もあります。

大東亜文学者大会にも3回参加するなど、積極的に国際的な交流にも参加していました。1943年には満洲文芸家協会大東亜連絡部長に就任しています。しかし満洲国崩壊後、古丁の経歴は大きく変化しました。中ソ友好協会に勤務した後、東北大学研究員を兼務。その後は哈爾浜で雑誌「知識」の編集に携わったものの、スパイ容疑で投獄された時期もありました。東北文芸雑誌社、哈爾浜東北文芸家協会評劇工作組、哈爾浜評劇院などで活動し、1949年には瀋陽唐山評劇院院長に就任。1950年から1952年までは瀋陽の東北戯曲新報社で「戯曲新報」編集に携わっていました。

1958年には反右派闘争の嵐に巻き込まれ、「漢奸」と断罪されました。病没した年は諸説ありますが、肺病により亡くなったと伝えられています。1979年に名誉回復を果たしました。

作品

古丁は、小説、詩、雑文など幅広い作品を残しました。代表的な作品には、長編小説『平沙』『新生』、短編集『奮飛』『竹林』、雑文集『一知半解集』『譚』、詩集『浮沈』などがあります。これらの作品は、満洲国という特殊な時代背景の下で生きた中国人の複雑な心情や、激動の時代を反映していると考えられます。

まとめ

古丁の生涯は、満洲国という歴史的状況と密接に結びつき、政治的混乱やイデオロギーの対立といった激動の時代を反映しています。文学者として、また政府機関職員として、様々な立場を経験した複雑な人物像は、歴史研究においても重要な意味を持ちます。彼の作品群は、満洲国時代の文学や社会状況を理解する上で貴重な資料となるでしょう。今後の研究によって、より詳細な人物像が明らかになることが期待されます。

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