古今韻会挙要

『古今韻会挙要』（こきんいんかいきょよう）は、元代に編纂された重要な韻書の一つです。この韻書は、大徳元年（1297年）に熊忠によって編纂されました。元になったのは、同郷の黄公紹が編纂した『古今韻会』という韻書ですが、残念ながら現存していません。『古今韻会挙要』は、その『古今韻会』の内容を簡潔にまとめたダイジェスト版として位置づけられます。

『古今韻会挙要』は、後世の辞書編纂にも大きな影響を与えており、『康熙字典』などの著名な辞書では、しばしば『韻会』と略称されて引用されています。このことからも、その学術的な価値の高さが伺えます。

韻の分類においては、劉淵が編纂した『壬子新刊礼部韻略』の107韻（平水韻の106韻に拯韻を加えたもの）を採用しています。しかし、『古今韻会挙要』の特筆すべき点は、既存の韻目にとらわれず、「字母韻」という独自の分類を設けたことです。この「字母韻」という分類は、当時の実際の音韻を反映したものと考えられており、当時の中国語の発音を研究する上で貴重な資料となっています。

さらに、『古今韻会挙要』は、韻図の手法も取り入れています。同韻内の声母を、七音（唇音、舌音、牙音、歯音、喉音、半舌音、半歯音）の順に並べ、さらに各音を清濁で分類するという、非常に詳細な記述がされています。この点も、当時の音韻を研究する上で重要な情報源となっています。

また、『古今韻会挙要』の大きな特徴の一つとして、各収録字に対して豊富な注釈が付されている点が挙げられます。この注釈は、過去の字書や韻書に記された注釈をまとめたものであり、一箇所で様々な資料を参照できるという利便性を備えています。これにより、字の解釈や歴史的な変遷をより深く理解することができます。

総じて、『古今韻会挙要』は、元代の音韻を研究する上で不可欠な文献であり、後世の辞書編纂にも大きな影響を与えた重要な韻書です。その詳細な音韻分類や豊富な注釈は、言語学の研究者にとって非常に価値のある情報を提供しています。

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