古代の大学

ブリテン諸島の古代大学：歴史と特徴

ブリテン諸島（イギリス、アイルランド）には、中世からルネサンス期にかけて設立され、現在も存続する7つの大学が存在します。これらは英語圏で最古の大学群であり、「古代の大学」と呼ばれています。ただし、この名称は「Ancient」の翻訳の揺れから生じたものであり、設立時期は中世から近世前期（1600年以前）にあたり、現代的な意味での「古代」とは関係ありません。「古大学」「古典大学」「旧大学」など、様々な訳語が用いられています。

これらの大学は、イングランドに2校、スコットランドに4校、アイルランドに1校所在し、それぞれ独自の伝統と歴史を誇ります。近代の大学とは異なる統治方法を採用しており、特にスコットランドの古代大学は、大学法によって定められた独自のガバナンスシステムを有しています。

古代大学の構成

古代大学は、以下の7校です（創立年順）。

オックスフォード大学
ケンブリッジ大学
セント・アンドリュース大学
グラスゴー大学
アバディーン大学
エジンバラ大学
ダブリン大学トリニティ・カレッジ

これらの他に、ノーザンプトン大学、フレーザーバラ、ダラムなど、設立が試みられたものの現存しない大学や、アバディーン大学の前身となる機関なども存在しました。オックスフォード大学とケンブリッジ大学は、合わせて「オックスブリッジ」と呼ばれます。

独自の学位制度

古代大学は、学士号として「マギスター（MA）」を授与するという特徴を持っています。これは一般的に「オックスブリッジMA」「トリニティMA（ダブリンMAとも）」「スコットランドMA」として知られています。スコットランドの古代大学は卒業時にMAを授与する一方、イングランドとアイルランドの古代大学は、修士号を取得してから通常約3年後、MAを授与するシステムです。学士号としてMAを授与するため、修士号に関しては「MLitt（T）」など様々な称号を授与しており、履修内容が用意されているプログラム（Taught Programme）か、自ら研究を進めるプログラム（Research Programme）かは注意が必要です。

スコットランドの大学法

スコットランドの古代大学は、1858年から1966年にかけて制定された大学法によって独自のガバナンスが確立されています。各大学は、総合協議会、大学裁判所、評議会の三者制によって運営され、最高責任者は副総長兼大学長です。総長は名誉職であり、各大学の総合協議会によって終身選出されますが、実際には任期途中で退任するケースが多いです。また、学生代表協議会も設置されています。

その後の大学設立

ブリテン諸島では、古代大学の設立後、19世紀まで新たな大学の設立は見られませんでした。そのため、これら7大学が「古代の大学」と呼ばれる所以です。19世紀以降、ロンドン大学、ダラム大学などの大学が設立され始めます。主な例としては、ウェールズ大学ランピーター校（1822年）、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン（1826年）、キングス・カレッジ・ロンドン（1829年）、ダラム大学（1837年）などが挙げられます。また、グラスゴーのストラスクライド大学は1796年のアンダーソニアン・インスティテュートを起源としつつも、1964年まで王室憲章を受け取っていませんでした。19世紀後半から20世紀初頭には赤レンガ大学群、1950年代と60年代にはプレートガラス大学群が設立され、1992年の高等教育法により工科大学が大学として認可されるなど、イギリスの高等教育は大きく発展を遂げています。

関連事項

オックスブリッジ
中世大学
赤レンガ大学群
* プレートガラス大学群

もう一度検索