古坂啓之助

古坂啓之助（こさか けいのすけ）は、安政5年12月17日（1859年1月20日）に生まれ、昭和10年（1935年）8月9日に世を去った、日本のメソジスト派の牧師です。彼の生涯は、日本の近代化とキリスト教の伝播が交錯する時代にあり、その活動は明治から昭和初期にかけて広く展開されました。

古坂は津軽藩士の家に生まれ、地元の弘前公会でキリスト教と出会いました。明治9年（1876年）4月2日には、宣教師ジョン・イングから洗礼を受け、信仰の道を歩み始めます。この洗礼は彼の人生の転機となり、翌明治10年末には弘前教会の勧士として、教会運営の一端を担うようになります。さらに明治11年（1878年）6月15日、デヴィソン宣教師より定住伝道者免許を授与され、正式に伝道者としての資格を得ました。彼は当時の日本メソジスト伝道の指導者である本多庸一の下で、弘前をはじめとする青森県内の各地で精力的な伝道活動を展開しました。この頃、地域社会の動きにも関心を持ち、弘前における自由民権運動にも参加しています。また、シマという女性と結婚し、家庭を築きました。

伝道者として経験を積んだ古坂は、明治15年（1882年）に東京で執事の按手を受け、教会における奉仕の範囲を広げました。そして明治17年（1884年）8月、日本美以教会（当時のメソジスト監督教会）の第1年会で長老按手を受け、正式に牧師として認定されます。これを機に、彼は各地の教会に派遣されることとなりました。最初の赴任地は山形教会でした。その後、活躍の舞台は九州へと移り、鹿児島教会（現在の日本基督教団鹿児島加治屋町教会）に転任。明治29年（1896年）9月には福岡教会、明治35年（1902年）8月には門司教会（現在の北九州市）で牧会にあたります。各地での牧会は、日本のメソジスト教会の国内伝道を推進する重要な役割を果たしました。

大正期に入った明治41年（1908年）、古坂は再び福岡教会の牧師として迎えられます。この二度目の在任期間において、彼は教会の自給化という困難な課題に真摯に取り組み、大きな成果を上げました。当時の日本の教会はしばしば海外からの財政援助に頼っていましたが、古坂は信徒たちの協力と献身を促し、教会独自の財政基盤を確立することに尽力しました。彼の指導により、福岡教会は財政的に自立し、これは他の日本の教会にとっても模範となる事例となりました。私生活では、昭和4年（1929年）に大久保保恵と再婚。その後も現役の牧師として、久留米東教会や山鹿教会など、主に九州地方の教会を転任しながら、晩年まで福音宣教と牧会に専念しました。

古坂啓之助の家庭からは、学術分野で名を成した人物が出ています。彼の二男である古坂嵓城は、後に日本の教育界で重要な役割を果たし、青山学院大学の学長を務めました。これは、古坂が信仰の道を究める一方で、家族の教育にも深い関心を寄せていたことを示しています。

古坂啓之助の生涯は、日本におけるプロテスタント教会、特にメソジスト派が草創期から発展期へと移行する過程と重なります。初期の開拓伝道から、各地での牧会、そして教会の自立を目指す重要な取り組みまで、彼の多岐にわたる活動は、日本のキリスト教史において確かな足跡を残しています。

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