古居みずえ

古居みずえ：レンズが捉える、パレスチナと福島の現実

古居みずえ（1948年 - ）は、日本のフォト・ジャーナリスト、そして映画監督として、社会の周縁に生きる人々に光を当て続けています。アジアプレス・インターナショナルに所属し、日本ビジュアル・ジャーナリスト協会にも名を連ねる彼女は、パレスチナや福島を主な舞台に、紛争や原発事故によって人生を大きく変えられた人々の姿を、写真と映像を通して世界に伝えています。

困難を乗り越え、ジャーナリストの道へ

島根県で生まれ、東京で暮らす古居は、37歳の時に重い関節リウマチを発症し、一時歩行困難となります。しかし、薬物療法によって奇跡的に回復。以前はOLとして働いていた彼女ですが、フォトジャーナリスト広河隆一の写真展に触発され、「一度きりの人生、何かを表現したい」という強い思いを抱くようになります。そして1988年、40歳という決して若くはない年齢で、フリージャーナリストとしてパレスチナへと渡ります。

パレスチナへの深いコミットメント

パレスチナでは、難民キャンプで暮らすガーダ・アギールと出会い、彼女の生活を12年もの長きに渡って記録し続けました。その成果は、2005年にドキュメンタリー映画『ガーダ パレスチナの詩』として結実します。この作品は、パレスチナの女性たちの日常と抵抗を描き出し、大きな反響を呼びました。また、写真集『パレスチナの女たち』は、DAYS国際フォトジャーナリズム大賞審査員特別賞を受賞。2006年には、長年の活動が評価され、第6回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞（公共奉仕部門）を受賞しています。

福島原発事故と飯舘村の母ちゃんたち

近年は、福島第一原発事故の影響を受けた地域、特に計画的避難区域に指定された飯舘村に焦点を当てた活動を展開しています。ドキュメンタリー映画『飯舘村の母ちゃんたち』では、故郷を追われた女性たちの苦悩と希望を描き出し、脱原発へのメッセージを発信しました。この作品を通して、古居は、困難な状況に置かれた人々が、それでも前を向いて生きる姿を伝えようとしています。

故郷への想い

古居は、出身地である島根県への社会貢献にも力を入れています。「古居みずえ故郷の会」を組織し、県内各地で映画の上映会や講演会を開催。自身の作品を通して、故郷の人々に問題意識を共有し、地域社会の活性化に貢献しています。

主な作品

著書

『インティファーダの女たち：パレスチナ被占領地を行く』（1990年、彩流社）
『パレスチナ 瓦礫の中の女たち』（2004年、岩波書店）
『ガーダ：女たちのパレスチナ』（2006年、岩波書店）
『ぼくたちは見た：ガザ・サムニ家の子どもたち』（2011年、彩流社）
『パレスチナ：戦火の中の子どもたち』（2015年、岩波書店）
『飯舘村の母ちゃんたち：福島・女性たちの選択』（2023年、彩流社）

フィルモグラフィー

『ガーダ パレスチナの詩』（2005年）
『ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち』（2011年）
* 『飯舘村の母ちゃんたち、土とともに』（2016年）

古居みずえの作品は、社会の光が当たりにくい場所に生きる人々の声に耳を傾け、彼らの現実を伝える貴重な記録です。彼女のレンズを通して、私たちは、紛争や事故といった悲劇の裏にある、人間の強さ、優しさ、そして希望を見出すことができるでしょう。

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