古屋安雄

古屋安雄：日本のキリスト教を深く見つめた神学者

古屋安雄（ふるや やすお、1926年9月13日 - 2018年4月16日）は、日本のキリスト教界において重要な役割を果たした神学者、牧師です。プリンストン神学校で神学博士号を取得後、東京神学大学、東京大学、自由学園最高学部などで教鞭を執り、アテネオ・デ・マニラ大学の客員教授も務めました。また、東京女子大学の宗教顧問、国際基督教大学教会牧師、チャプレンなどを歴任し、国際基督教大学名誉教授、聖学院大学大学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科科長、教授としても活躍しました。

生い立ちと経歴

古屋安雄は、社会的福音を唱えたリベラル派の父と、南長老ミッションの神学校出身の母のもと、中国の上海で生まれました。幼少期からの友人には、後に国際政治学者となる坂本義和がいます。旧制高校在学中に徴兵され、数ヶ月間軍隊生活を送りました。戦後、自由学園男子部を経て日本神学専門学校（現東京神学大学）を卒業。ドイツのテュービンゲン大学、アメリカのサンフランシスコ神学大学、プリンストン神学校で神学を学びました。

1959年に国際基督教大学教会牧師と宗務部長に就任。その後、教授となり、1999年に定年退職、名誉教授となりました。さらに、聖学院大学教授、科長を歴任し、2010年に退任。1998年からは東京女子大学の宗教顧問も務めました。また、賀川豊彦学会の会長も務め、2007年にはキリスト教界への貢献が認められ、第38回キリスト教功労者を受賞しました。彼の墓所は、八王子市上川霊園の国際基督教大学教会墓地にあります。

神学思想

古屋安雄は、エキュメニカル派（リベラル派）に属しながらも、保守的なクリスチャンであった母親の影響もあり、福音派を批判的に分析しつつも、その意義を認め、福音派との交流も持ちました。彼は、日本のキリスト教の特徴として、知識階級や中流階級の没落士族に福音が浸透したことを指摘し、それがリベラル神学を受け入れる下地になったと分析しました。また、朝鮮・韓国のキリスト教史と比較し、民衆に浸透した韓国に対し、日本のキリスト教が中流・知識層中心であった問題を提起し、尾形守の論文『日韓教会成長比較 - 文化とキリスト教史』に賛同し、序文を書いています。

戦時下の日本基督教団の国民儀礼や教団成立については、アメリカの教会に対する「甘えの構造」があったと指摘。戦後には、アメリカの教会が日本基督教団をエキュメニカル運動のモデルとしようとした思惑があったとしました。エキュメニカル派と福音派の共通のルーツとして、1846年の福音同盟大会を挙げ、教会が再生するためには、リベラル派が謙虚に福音派から学び、キリスト教信仰の確実性を回復するか、原理主義を克服した福音派が信仰を保持しつつ社会的な関心を継承するしかないと考えました。特に後者の可能性が高いと見ていました。

また、日本のキリスト教会の信仰平均寿命が2.8年という数字が教界で語られることがありましたが、これは日本のキリスト教会全体の平均ではなく、新宿区にある日本基督教団の一教会のデータに過ぎないことを指摘しました。

著書と翻訳

古屋安雄は、多くの著作を通じてその神学思想を広めました。

主な著書には以下のようなものがあります。

『キリスト教国アメリカ その現実と問題』（1967年）
『キリスト教の現代的展開 古屋安雄論文集』（1969年）
『プロテスタント病と現代 混迷からの脱出をめざして』（1973年）
『激動するアメリカ教会 リベラルか福音派か』（1978年）
『現代キリスト教と将来』（1984年）
『宗教の神学 その形成と課題』（1985年）
『大学の神学 明日の大学をめざして』（1993年）
『日本伝道論』（1995年）
『日本の将来とキリスト教』（2001年）
『日本のキリスト教』（2003年）
『キリスト教国アメリカ再訪』（2005年）
『キリスト教と日本人 「異質なもの」との出会い』（2005年）
『神の国とキリスト教』（2007年）
『なぜ日本にキリスト教は広まらないのか 近代日本とキリスト教』（2009年）
『宣教師 招かれざる客か?』（2011年）
『日本のキリスト教は本物か? 日本キリスト教史の諸問題』（2011年）

また、以下のような翻訳も手がけました。

『バルトとの対話』（1965年）
『教会と社会の間で 牧会ノート』新版（1971年）
『現代倫理の争点 状況倫理を超えて』（1973年）
『キリスト教と社会主義 ティリッヒ著作集』（1978年）
『プロテスタント時代の終焉 ティリッヒ著作集』（1978年）
『キリスト教信仰と倫理』（1992年）
『講解・使徒信条 キリスト教教理概説』（1996年）
『キリスト教神学資料集』（2007年）

記念論集

* 『知と信と大学 古屋安雄・古稀記念論文集』（1996年）

古屋安雄は、日本のキリスト教界の発展に大きく貢献した人物であり、その神学思想は今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。

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