古田陽久

古田陽久（ふるた はるひさ）氏は、1951年4月24日生まれの日本の世界遺産研究者です。山口県萩市を本籍とし、広島県呉市で育ちました。広島県立呉三津田高等学校を経て慶應義塾大学経済学部を卒業後、日商岩井（現在の双日）で15年間にわたり総合商社の業務に従事しました。商社での経験を活かし、研究者としての道を歩み始めます。

活動の始まりと基盤の構築

1990年、古田氏はシンクタンクせとうち総合研究機構を設立しました。これは、その後の世界遺産研究および関連活動の重要な拠点となります。設立当初、日本ではユネスコの世界遺産に関する体系的な情報が限られていました。この状況に着目した古田氏は、世界遺産に関する膨大なデータの収集と整理を精力的に進めます。この取り組みの成果として、1995年11月には『世界遺産データ・ブック』を刊行しました。この書籍は、世界各国の世界遺産情報を網羅した画期的なものであり、朝日新聞の全国版で紹介されるなど、国内における世界遺産への関心を高める上で大きな役割を果たしました。同書は日本図書館協会および全国学校図書館協議会の選定図書にも選ばれ、公共図書館や学校図書館に広く普及しました。

世界遺産総合研究所の設立と地域連携

1998年には、世界遺産に関する専門的な研究と普及活動を一層推進するため、世界遺産総合研究所を設立し、その所長に就任しました。この研究所を核として、研究成果の発信や啓発活動を本格化させます。特に力を入れた活動の一つが、地域社会と連携した世界遺産登録に向けた取り組みへの支援です。

地域からの登録運動を支援

2001年、北海道弟子屈町が摩周湖の世界遺産登録を目指して行った講演・シンポジウムへの支援を契機に、古田氏は地域振興の視点から、各地で起こる世界遺産登録運動の支援に深く関わるようになります。教育、観光、まちづくりといった多様な側面から、世界遺産を通じた地域活性化の可能性を追求しました。これらの活動は、著書『世界遺産Q&A－世界遺産化への道しるべ－』（1998年）や『誇れる郷土ガイドー全国の世界遺産登録運動の動きー』（2003年）などにまとめられています。これらの書籍は、世界遺産登録プロセスへの具体的な道筋を示し、全国各地の登録運動の動きを紹介することで、運動全体の機運醸成に貢献しました。特に『世界遺産Q&A』は改訂を重ね、2003年には台湾で中国語版が出版されるなど、海外でもその知見が共有されました。メディアにおいても、朝日新聞や日本経済新聞などで論評を発表し、世界遺産を巡る議論に貢献しています。

「世界遺産学」の提唱と国際的な評価

古田氏は、世界遺産を単なるリストや個別の事例として捉えるのではなく、学際的な視点からその理念、歴史、保全、活用などを体系的に研究する「世界遺産学」という新たな学問分野を提唱しました。この提唱は、アジア地域における世界遺産研究のフロンティアを開拓するものとして、各方面から高い評価を得ています。研究活動と並行して、国内外で積極的に講演活動を展開しており、ウズベキスタン、中国、韓国、台湾といったアジア諸国だけでなく、広島女学院大学、神戸大学、中京大学、サイバー大学（教授を務めた期間もある）、福岡県立大学、国際基督教大学などの日本の教育機関でも教鞭を執り、専門知識の普及と次世代の育成に努めています。また、中国大運河フォーラムのような国際的な場での講演や、テレビ、ラジオ、新聞といった各種メディアでのコメント出演も多く、その知見は社会に向けて広く発信されています。

広範な著作・論考活動

シンクタンクせとうち総合研究機構からは、世界遺産に関する書籍を毎年多数刊行しており、それらの多くは古田真美氏との共著です。また、他社からも『世界の記憶遺産60』（共著）や『ズバリ図解 世界遺産』（監修）などを出版しています。さらに、専門誌や新聞への論文、論評も多数寄稿しており、文化遺産、自然遺産、記憶遺産など、多岐にわたるテーマで世界遺産に関する深い考察を発表しています。

社会貢献と受賞歴

長年にわたる研究活動と社会への提言は、複数の受賞によって称えられています。地方自治体や企業が主催する懸賞論文や政策提言において、「緑の都市づくり」「地域活性化」といったテーマで優れた提案を行い、緑の都市賞建設大臣賞や毎日郷土提言賞（広島県優秀賞、埼玉県優秀賞）などを受賞しています。また、「ふるさとテレビ第8回お国自慢ふるさとコンクール」写真の部での受賞や、故郷である呉市や熊本県の地域に根差した作詞活動も行っています。

古田陽久氏は、広島を活動の拠点としながらも、その視野は国内外に及び、教育、出版、講演、地域連携といった多角的な活動を通じて、世界遺産の重要性を広く伝え、その保全と活用を通じた持続可能な地域社会の実現に貢献し続けています。

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