古部賢一

古部賢一氏は、1968年に大阪市港区池島二丁目に生まれました。実家は「道義湯」という名の銭湯で、氏はその四代目にあたります。幼少期を銭湯という賑やかな環境で過ごしましたが、音楽への道に進むきっかけは、中学校の吹奏楽部にありました。

中学二年のある日、吹奏楽部で活動していた妹が楽しそうにしている姿を見て興味を持った古部氏に、顧問の教諭が声をかけました。この教諭こそ、後に大阪桐蔭高等学校吹奏楽部を率いて全国的な名声を博すことになる梅田隆司氏です。梅田氏に勧められる形でオーボエと出会った古部氏は、その独特の音色に魅了され、深く音楽の世界へと足を踏み入れていくことになります。東京藝術大学への進学もまた、梅田氏の強い後押しがあったといわれています。

大阪府立大手前高等学校を卒業後、一年間の浪人生活を経て、東京藝術大学音楽学部器楽科に入学しました。大学での学びの中で才能を開花させた古部氏は、四年次という在学中に異例の早さで新日本フィルハーモニー交響楽団の首席オーボエ奏者に就任するという快挙を成し遂げます。プロの演奏家としてのキャリアをスタートさせた後も研鑽を続け、1995年から翌1996年にかけては、ドイツ国立ミュンヘン音楽大学大学院に留学し、さらなる表現力の向上を目指しました。

オーボエを中山和彦、北島章、小畑善昭、小島葉子、ランダル・ヴォルフガング、ギュンター・パッシンといった国内外の著名な奏者に師事。また、室内楽の分野では村井祐児氏や中川良平氏に学び、アンサンブルにおける深い造詣を培いました。

新日本フィルハーモニー交響楽団の首席奏者として長年にわたり活躍する傍ら、ソリストとしても国内外のオーケストラと共演するなど、精力的な演奏活動を展開しました。その功績は高く評価され、2000年には優れた音楽家に贈られる出光音楽賞を受賞しています。

現在は、東京音楽大学准教授として後進の指導にあたるほか、相愛音楽大学の非常勤講師や札幌大谷大学芸術学部の客員教授も務め、音楽教育の普及・発展に貢献しています。また、自身のルーツである銭湯文化への深い愛情から、日本銭湯文化協会の銭湯大使としても活動しており、音楽のみならず、日本の伝統文化の振興にも尽力しています。

オーボエ奏者、指揮者、教育者、そして銭湯大使と、多岐にわたる顔を持つ古部賢一氏は、そのユニークな経歴と豊かな音楽性で、多くの人々に影響を与え続けています。

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