古龍

古龍（クー・ルン）は、1938年に香港で生まれ、台湾で活躍した武俠小説家です。本名は熊耀華（ション・ヤオホワ）。金庸、梁羽生と並び、新派武俠小説の三大家として知られています。彼の作品は、伝統的な武俠小説の枠にとらわれない独特なスタイルで、多くの読者を魅了しました。

生涯

幼少期を香港で過ごした後、13歳で台湾に移住。1956年に文壇デビューしましたが、当初は武俠小説を書いていませんでした。1960年に『蒼穹神剣』を発表して以降、武俠小説家としての道を歩み始めます。

1977年頃から体調を崩し、1980年には酒席でのトラブルで重傷を負い、輸血が原因で肝炎を発症。この事件以降、作品の多くが代筆とされるようになりました。1985年、波乱に満ちた生涯を終え、病死しました。

古龍は、酒をこよなく愛し、豪快な金遣いをしていたことで知られています。また、4度の結婚を経験し、その奔放な私生活は、しばしば話題となりました。彼の作品には、そうした経験が反映されているとも言われています。

「小説を書くのは金のため」と公言し、作品の権利を売却したり、代作をさせたりすることも厭いませんでした。そのため、彼の作品は複数の出版社から刊行され、著作権を巡るトラブルも多発しました。

作風

古龍の作品は、主人公が物語開始時から武術や人格が完成していることが多く、過去が語られないことも特徴です。金庸の作品が主人公の成長や恋愛を中心に描くのに対し、古龍は男同士の友情やハードボイルドな雰囲気を重視する傾向があります。特に「友達」という存在は、彼の作品において重要な意味を持っています。

しかし、初期の作品には、主人公が成長していくというオーソドックスなスタイルも見られます。中期以降に見られる特徴的なスタイルは、1966年の『武林外史』がその雛形とされています。主人公の沈浪、相棒の熊猫児、ヒロインの朱七七といったキャラクターは、後の作品にも影響を与えました。

文体も独特で、カメラワークを意識したような描写や、「人間とは…」「女とは…」といった大上段からのテーゼが多用され、それがハードボイルドな魅力を醸し出しています。これらの言葉は「古龍箴言集」として出版されるほど人気を集めました。

当時の台湾の政治情勢からか、具体的な事件や人物を避ける傾向があり、架空の人物を多く登場させました。しかし、その癖のある魅力的なキャラクターたちは、多くの読者を魅了し、「香港の金庸、台湾の古龍」と並び称されるほどの人気を得ました。

家族

父親とは確執がありましたが、晩年に和解。妹の熊暁燕とは特に親しく、臨終に立ち会ったのは彼女だけだったとされています。

最初の妻はダンサーの鄭月霞で、長男の鄭小龍をもうけましたが、離婚。2番目の妻は日中のハーフのダンサー葉雪で、次男の葉怡寛をもうけましたが、これも離婚。3番目の妻は梅宝珠で、三男の熊正達をもうけましたが、古龍のスキャンダルが原因で離婚。4番目の妻は于秀玲です。

長男の鄭小龍は警察官で、柔道の名手として知られていますが、父親としての古龍については「最低の男だった」と評しています。

主な作品

古龍は、数多くの武俠小説を執筆しました。初期作品には『蒼穹神剣』『月異星邪』などがあります。中期以降には、『武林外史』『絶代双驕』『流星・蝴蝶・剣』『楚留香』シリーズ、『小李飛刀』シリーズ、『陸小鳳』シリーズなど、数々の名作を生み出しました。特に、これらのシリーズは、映像化作品も多く制作され、日本でも人気があります。

著作権問題

古龍の死後、彼の作品の著作権を巡るトラブルが多発しました。代筆作品が多く、権利関係が複雑に絡み合ったことが原因です。家族間でも裁判が起こるなど、混乱が続きましたが、後に和解しています。

日本語訳と映像化

日本では、小学館、コーエー、角川書店などから複数の翻訳版が出版されています。また、『楚留香』『小李飛刀』『陸小鳳』シリーズなどの映像化作品も人気があり、多くのファンを魅了しています。

古龍は、その独特な作風と波乱に満ちた生涯で、武俠小説の世界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、今もなお多くの読者に愛され続けています。

参照：

• - 古龍記念サイト（繁体字）
• - 古龍国（繁体字）
• - 古龍武俠サイト（簡体字）
• - 古龍研究会（簡体字）

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