只見幹線

只見幹線

只見幹線（ただみかんせん）は、電源開発送変電ネットワーク株式会社（通称：J-POWER送変電）が所有・運用する、日本の主要な送電線の一つです。この送電線は、福島県南会津郡只見町にある電源開発田子倉発電所を発起点とし、関東地方の大消費地である東京都町田市および神奈川県川崎市麻生区に位置する西東京変電所まで、長距離にわたって電力を送る重要な役割を担っています。日本の基幹電力系統を構成する設備として、電源開発の発電所で生み出された電力を安定的に供給するために不可欠な存在です。

この送電線のルート上には、J-POWER送変電のみならず、東京電力パワーグリッド株式会社が保有する複数の重要な変電所が配置されています。只見幹線はこれらの変電所を経由することで、他の様々な送電線と接続・連係することが可能です。この連係機能により、広域的な電力融通や系統の安定化に貢献しており、地域間の電力需給バランスを調整する上で中枢的な役割を果たしています。複数の事業者が共同で設備を活用し、互いの系統と連携することで、より信頼性の高い電力供給システムが構築されています。

只見幹線の歴史は、1959年5月に電源開発田子倉発電所がその運転を開始した時期に遡ります。発電所の稼働と時を同じくして、只見幹線および電源開発南川越電力所（現在の埼玉県川越市に位置）が運用を開始しました。当時の送電電圧は27万5千ボルト（275キロボルト）でした。これは当時の日本の送電技術において高電圧にあたるものでしたが、その後の社会の電力需要の増加や技術の進歩に伴い、さらなる大容量・長距離送電への対応が求められるようになりました。

こうした背景の中、只見幹線はその能力を飛躍的に向上させるための重要な改修工事を実施しました。1999年4月16日には、特に東京電力（当時）新坂戸変電所（埼玉県坂戸市）と東京電力（当時）東群馬変電所（群馬県沼田市）の間の区間において、送電電圧を50万ボルト（500キロボルト）へと昇圧する大規模な工事が完了し、運用が開始されました。この電圧昇圧は、送電容量を大幅に増加させることを可能にしました。具体的には、昇圧前の72万キロワットという容量から、一気に約10倍以上にあたる750万キロワットという、非常に大きな容量での送電が可能となりました。

電圧を高くすることで、同じ送電線であっても、より多くの電力をロス少なく送ることが可能になります。この50万ボルトへの昇圧によって、只見幹線は名実ともに日本の大容量基幹送電路の一つとしての地位を確立しました。関東地方をはじめとする大都市圏への安定した電力供給を支える上で、その重要性はさらに増しました。単に電力を送るだけでなく、複数の変電所を経由し、他の送電線と連携することで、電力系統全体の安定運用や、災害時における電力供給のバックアップなど、多岐にわたる機能を発揮しています。このように、只見幹線は日本の電力インフラの根幹をなす設備として、現在も重要な役割を果たし続けています。その経路や経由する変電所は、日本の広域的な電力ネットワークの構造を理解する上で、しばしば注目される要素となっています。

関連事項としては、日本の電力系統全体、あるいは高電圧送電技術などが挙げられます。只見幹線のような大容量送電線は、現代社会における電力供給の信頼性と安定性を確保するために不可欠であり、その建設や運用には高度な技術と計画が必要とされます。過去の増強の歴史は、日本の電力需要の変遷と、それに合わせてインフラがどのように進化してきたかを示す好例と言えるでしょう。

もう一度検索