台北清真寺

台北清真寺

台北清真寺は、台湾最大のモスクとして知られ、台北市大安区に位置しています。1960年に完成して以来、台湾におけるイスラームの中心的な存在であり続けています。

歴史的背景

建設の経緯

第二次世界大戦後、国共内戦を経て台湾に渡った国民党政府とともに、約2万人のムスリムが移住しました。彼らは、以前は日本家屋だった建物を改修して礼拝所としていましたが、ムスリム人口の増加に伴い、新たなモスクの必要性が高まりました。1957年、当時の外交部長である葉公超が、イスラーム諸国との外交関係を維持するため、モスク建設を提案しました。その結果、1949年12月12日には、600人収容可能なモスク建設を目指す「台北清真寺建設委員会」が発足しました。

清真寺の建設

1958年4月、中国回教協会は張子良氏から台北市大安区新生南路の土地を購入し、同年11月に建設が開始されました。2年後の1960年4月13日、当時としては極東最大規模のモスクである台北清真寺が完成しました。落成式には、副総統の陳誠をはじめ、ブルネイ、フィリピン、日本、マレーシア、タイ、香港、オーストラリアなど多くの国々からの代表が出席し、ブルネイのスルタンがクルアーンを朗読しました。建設費の一部は、イランやヨルダンからの寄付と台湾銀行からの融資で賄われ、サウジアラビアや寧夏回族自治区からも寄付がありました。

しかし、土地の名義変更手続きの不備により、土地の所有権は張子良氏のままとなり、後に法的な問題へと発展しました。

立ち退きの危機

1987年、張子良氏が土地の返還を求めて訴訟を起こしました。裁判では台北清真寺側が勝訴しましたが、張子良氏の死後、彼の息子たちが土地の権利をセメント会社に売却し、立ち退きを要求される事態となりました。この危機を回避するため、清真寺は市定古跡への登録を目指し、1999年3月29日、台北市は清真寺を市定古跡として認定しました。この認定は、清真寺の年代や芸術的価値だけでなく、マイノリティの文化を尊重するという社会的意義が重要視されました。

現在の活動

現在、台北清真寺は台湾のムスリムにとって重要な礼拝の場であり、また、文化的な交流の場としての役割も担っています。

礼拝

礼拝は、イマームがアラビア語でクルアーンを朗読した後、中国語で解説します。金曜礼拝は13時から15時の間に行われます。

ハラール認証

台北清真寺は、台湾の飲食企業やホテルに対し、ハラール認証を行っています。2010年には、マレーシアのハラール認証機関であるマレーシア・イスラム開発局から、ハラール認証機関として公認を受けました。

建築様式

台北清真寺は、鉄筋コンクリート造で、華北の宮殿建築とオスマン建築、ペルシャ建築の融合が図られています。設計は、鉄筋コンクリートを用いた宮殿建築を得意とする楊卓成氏によるものです。

礼拝室

礼拝室はマッカの方向を向いており、ペルシャ絨毯が敷かれ、シャンデリアが吊るされています。ミフラーブは馬蹄型アーチで装飾され、幾何学的なステンドグラスが換気のために設けられています。礼拝室は2階建てで、1階が男性用、2階が女性用となっています。なお、礼拝室はムスリム以外は立ち入り禁止です。

ドーム

中央に大きなドーム、両端に小さなドームがあります。ドームは、以前は緑色でしたが、2015年に金色に塗り替えられました。高さは15mで、支柱はありません。

ミナレット

高さ20mの鉄筋コンクリート製のミナレットが2本あります。頂点のタマネギ型のドームは、中国建築と中東の建築を融合させたデザインです。

市定古跡としての価値

1999年6月29日、台北清真寺は台北市の古跡として登録されました。その評価基準は、歴史的、文化的な価値、建築技術の特徴、そして、台北市のランドマークとしての重要性でした。台北清真寺は、台湾のムスリムの歴史の中で重要で神聖な建物とされています。

まとめ

台北清真寺は、台湾におけるイスラーム文化の象徴であり、歴史的にも建築的にも重要な価値を持っています。その存在は、台湾の多文化共生の精神を体現しており、これからも多くの人々に親しまれることでしょう。

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