中国回教協会

中国回教協会：台湾におけるイスラム教の中心

中国回教協会は、台湾における最大のイスラム教組織であり、台湾のムスリムコミュニティにとって重要な存在です。この協会は、モスクの運営だけでなく、教育、文化交流、ハラール認証など、多岐にわたる活動を展開しており、台湾におけるイスラム教の発展とムスリムの生活向上に大きく貢献しています。

歴史的背景

中国回教協会の歴史は、日中戦争中の1938年にまで遡ります。当時、中国国民党の軍人であった白崇禧が中心となり、日本のムスリム懐柔政策に対抗するため、中国のムスリムをまとめる全国組織として設立されました。この組織は、当初「中国回民救国協会」として発足し、抗日運動を支援する役割も担っていました。その後、国共内戦を経て、1949年に国民党とともに台湾へと移転し、1958年に「中国回教協会」として再発足しました。

設立までの道のり

清末から中華民国初期にかけて、イスラム教指導者たちは西アジアで最新の知識を学び、メッカ巡礼を行うようになりました。彼らは中国のイスラム教の改革を必要と感じ、1912年には王浩然が北京で「中国回教倶進会」を発足させました。この組織は全国的な広がりを見せましたが、国民政府の政策により解散を余儀なくされました。

その後、日中戦争が勃発すると、日本の進出に対抗するため、各地でムスリムが団結を始めました。1938年1月には王静斎らが鄭州で「中国回民抗日救国協会」を発足させ、全国のムスリムを代表して侵略に反対する姿勢を表明しました。同年4月には、白崇禧が中心となり、全国規模のイスラム教組織を設立する協議が行われ、「中国回民救国協会」が誕生しました。この協会は、日中戦争の激化に伴い重慶へと移転し、1939年には「中国回教救国協会」と改称されました。このようにして、国民政府唯一の公認イスラム教組織が誕生しました。

戦時下の活動

協会の主な目的は、国民政府と協力して日本軍と戦い、その中で宗教活動を行うことでした。戦時下では、「国民政府の擁護」「三民主義の実践」「抗戦建国への協力」が活動の基本方針とされました。協会は、モスクの運営、イスラム教教育の推進、被災ムスリムの救済など、多岐にわたる活動を展開しました。また、国際交流も積極的に行い、エジプト留学団の派遣や、中馬文化協会、中伊文化協会の設立準備も進められました。

台湾への移転と復興

日中戦争終結後、中国回教協会は、国民政府とともに台湾へと移転しました。当初、台湾のムスリムはごく少数でしたが、協会は困難な状況下でも活動を続け、1958年に再発足しました。台湾政府の支援を受けながら、ムスリムの地位向上を目指し、イスラム諸国との関係を深めるための活動を積極的に行いました。

台北清真寺の建設

台湾におけるイスラム教のシンボルとも言えるのが、台北清真寺です。協会は、政府やイスラム諸国からの支援を受け、1960年に台北清真寺を完成させました。このモスクは、台湾におけるイスラム教の中心地として、多くのムスリムにとって重要な場所となっています。また、モスクの建設は、台湾政府がイスラム世界との関係を重視する姿勢を示すものでもありました。

現在の活動

現在、中国回教協会は、台湾のムスリムコミュニティの発展に大きく貢献しています。モスクの運営だけでなく、ハラール認証、教育、文化交流、ムスリムフレンドリーな環境整備など、幅広い活動を行っています。また、国際交流も活発に行っており、世界各地のイスラム教組織との連携を深めています。

主要な活動

教育活動

協会は、中国回教文化教育基金会を通じて、ムスリムへの奨学金やイスラム教に関する講義を行っています。また、宗教教義言及委員会を設立し、イスラム教に関する書籍や文献の翻訳、無料公開を行っています。

マッカ巡礼の支援

毎年、マッカ巡礼団を派遣しており、政府の支援も受けています。これにより、台湾のムスリムが宗教的な義務を果たすことができるようサポートしています。

ハラール認証

協会は、台湾におけるハラール認証の中心的な役割を担っています。モスクが認証機関として公認を受けており、食品やレストラン、ホテルなど、幅広い分野でハラール認証を行っています。台湾政府の「新南向政策」にも協力し、ムスリム市場の開拓を支援しています。ムスリム事業者には「ムスリムレストラン認証」、非ムスリム事業者には「ムスリムフレンドリー認証」を行っています。また、観光施設向けの認証も行っています。

ムスリムフレンドリー化

政府や観光協会と連携し、観光事業者向けのセミナーや指導を通じて、ムスリムフレンドリーな環境づくりを推進しています。また、駅や公共施設への礼拝所の設置を推進し、ムスリム観光客向けのアプリ「Halal.Taiwan」も提供しています。

国内外の団体との関係

国内

中国回教青年会との間には、過去に摩擦がありましたが、現在は協会の傘下に入っています。また、インドネシアのイスラム教組織ナフダトゥル・ウラマーの台湾支部であるPCINU台湾とも協力関係にあります。

国外

ムスリム世界連盟やRISEAPなど、国際的なイスラム教組織とも連携しています。また、中国イスラム教協会との交流も進めています。

まとめ

中国回教協会は、台湾におけるイスラム教の発展を支える重要な組織です。その活動は、台湾のムスリムの生活向上だけでなく、台湾とイスラム世界との関係を深める上で大きな役割を果たしています。

今後も、協会は台湾におけるイスラム教の発展と、多様な文化が共存する社会の実現に貢献していくことが期待されます。

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