台湾放送協会

台湾放送協会は、かつて日本統治時代の台湾において、放送事業を担っていた重要な組織です。1931年2月に社団法人として設立され、その事業運営には官民双方からの支援と関与がありました。

設立とその背景

台湾におけるラジオ放送の歴史は、1925年6月、台湾総督府交通局逓信部が行った実験放送に端を発します。これは施政30周年を記念して行われ、台湾での放送開始の契機となりました。この動きを受け、1928年11月には総督府交通局が台北放送局を開設し、本格的な実験放送が始まりました。その後、板橋放送所が建設され、1931年1月には出力が10kWに増強され、本放送へと移行しました。同年2月1日、社団法人台湾放送協会が設立され、総督府から番組編成や聴取者対応といった業務を委託される形で事業を開始しました。協会は半官半民の形態で運営され、設立当初の聴取料は月額1円でした。当初は総督府が技術・施設を、協会がソフト面を担いましたが、後に協会も技術的な事項を担当するようになりました。

事業展開と番組の特徴

台北を拠点に、協会は台南、台中、嘉義、花蓮港と島内各地に放送局を開設し、放送網を拡充していきました。送信出力も増強され、特に1940年には100kWの民雄放送所が運用を開始し、島内向け放送の重要な拠点となりました。

番組編成においては、多様な聴取者層に応えるため、様々な試みが行われました。1942年10月からは二重放送が実施され、日本人向けと台湾人向けの番組が同時に放送されました。台湾人向け放送では、以前から福建語や台湾語によるニュースが放送されており、多様な台湾音楽も盛んに紹介され、人気を博しました。ただし、台湾原住民の言語による番組は制作されませんでした。特筆すべき点として、1932年には日本で初めてとなる広告放送を行った期間があることも挙げられます。

海外への展開

島内放送に加え、台湾放送協会は短波放送による海外への情報発信も積極的に行いました。1937年7月からは、日本語、福建語、北京語、英語、広東語、マレー語、安南語など、多言語での放送を展開しました。これは、当時の国際情勢や日本の南方政策と連携したものであり、台湾が対外放送の拠点としての役割も担っていたことを示しています。

歴史の幕引き

太平洋戦争が終結した1945年8月15日、協会は終戦の玉音放送を中継しました。戦争終結後、同年10月25日には中華民国政府による台湾の接収に伴い、台湾放送協会もその対象となりました。11月30日をもって、協会の全職員は解雇され、組織としての台湾放送協会は解散しました。協会が所有していた放送施設や設備は、中華民国政府の中央広播事業管理処に継承され、これが現在の中国広播公司へと繋がっています。

台湾放送協会は、日本統治下という特殊な時代において、台湾におけるラジオ放送の発展に大きな足跡を残しました。その事業内容は、島内向けの多言語対応や海外放送など、当時の社会情勢を反映した多様な側面を持っていました。

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