台湾民主国

台湾民主国とは

台湾民主国（たいわんみんしゅこく）は、1895年の日清戦争終結後、下関条約によって台湾が日本に割譲されることに反対した台湾の官民によって樹立された短命の政権です。この政権は、台湾が日本の支配下に入ることを阻止しようとする試みとして生まれましたが、国際的な承認を得られず、日本軍の侵攻によりわずか数ヶ月で崩壊しました。

台湾民主国成立の背景

日清戦争で敗北した清国は、下関条約により台湾と澎湖諸島を日本に割譲することを余儀なくされました。この条約は台湾住民に知らされないまま締結され、これにより台湾住民は日本国民となることが決定しました。しかし、清国の一部官僚や台湾の有力者たちは、日本の台湾領有を認めず、抵抗を試みました。

彼らは、台湾が日本に割譲されることを阻止するため、1895年5月23日に台湾民主国の独立を宣言しました。この独立宣言は、台湾の官僚や地元の有力者たちによって主導され、唐景崧が初代総統に選出されました。また、国旗には黄虎旗が採用され、「永清」と改元しました。さらに、丘逢甲が副総統、劉永福が大将軍に任命され、国家体制が整えられました。

台湾民主国の崩壊

しかし、台湾民主国は国際的な承認を得ることができず、日本軍の侵攻に直面することとなりました。5月29日、日本軍が台湾に上陸すると、台湾民主国軍はすぐに総崩れとなり、6月3日には基隆が占拠されました。これにより、政府は機能不全に陥り、唐景崧は公金を横領して逃亡しました。その後、台南では劉永福が総統に選出され、抵抗を続けましたが、日本軍の圧倒的な戦力差により、10月下旬には台南も陥落し、劉永福も中国本土へ逃亡しました。これにより台湾民主国は事実上崩壊しました。この間、日本軍による掃討戦は「乙未戦争」とも呼ばれ、清国側は台湾平定を「台湾鎮定」や「台湾征討」と呼称しました。

台湾民主国を巡る歴史的評価

台湾民主国は短命の政権でしたが、その歴史的評価は非常に複雑です。欧米の研究者の中には、台湾民主国を清国官僚が主導したものであり、国際的な支持を得ることで日本の権益拡大を阻止しようとしたに過ぎないとする見方があります。彼らは、台湾民主国が一般の台湾住民の支持を得ておらず、清国への忠誠心が強かったと主張します。

一方、中国の民族主義者は、台湾民主国を中国人による抗日運動の一環と捉え、台湾の主権問題を中国に帰属させる根拠としています。しかし、台湾独立派の歴史家は、台湾民主国が独立を標榜したものの、その思想は台湾の民衆とは一致しておらず、あくまで清国の枠組みを超えることはなかったと評価しています。彼らは、独立宣言に清国の暦を使用する文言が含まれていることを指摘し、台湾民主国の独立精神に疑問を呈しています。

台湾民主国年表

1895年5月23日：「台湾民主国自主宣言」発表
1895年5月25日：唐景崧が台湾民主国総統に就任、台湾民主国が正式に成立。永清と改元
1895年5月29日：近衛師団が澳底より上陸
1895年6月3日：獅球嶺砲台と基隆が陥落、民主国軍崩壊
1895年6月4日：唐景崧が公金を横領し中国に逃亡、第一共和崩壊
1895年6月26日：劉永福が台湾民主国総統に就任
1895年10月19日：台湾民主国総統劉永福が中国へ逃亡
1895年10月21日：日本軍が台南入城、「台湾民主国」崩壊
1895年11月18日：台湾総督府による全島平定宣言

台湾民主国の主要人物

総統：唐景崧、劉永福
軍務大臣：李秉瑞
内務大臣：兪明震
外務大臣：陳季同
大将軍：劉永福
* 団練史：丘逢甲

台湾民主国は、台湾史において重要な出来事であり、その評価は今日まで議論されています。

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