台湾総督府鉄道1形蒸気機関車

台湾鉄道の原点：1形蒸気機関車「騰雲」

1形蒸気機関車は、台湾が日本統治下に入る以前の清国時代に、基隆・台北間の鉄道建設のために導入された車両です。ドイツのホーエンツォレルン機関車製造で製造された2両の機関車は、台湾鉄道の歴史を語る上で欠かせない存在です。

誕生と初期

1887年、清国政府は鉄道建設のため、ドイツのホーエンツォレルン社から2両の小型タンク式蒸気機関車を輸入しました。これらの機関車にはそれぞれ「騰雲（とううん）」と「御風（ぎょふう）」という愛称が与えられ、台湾における鉄道の黎明期を支えました。

形態と特徴

1形は、ドイツ流の洗練されたデザインが特徴です。当初はシンプルなパイプ型の煙突でしたが、火の粉の飛散を防ぐため、1906年頃にダイヤモンド型へと改良されました。この形態の変化は、当時の技術的な課題と対策を物語っています。

日本統治時代

1895年の日清戦争後、台湾が日本に割譲されると、1形も日本陸軍の管理下に入り、その後、台湾総督府鉄道へと引き継がれました。1902年には、台湾総督府鉄道が南北に分断されていたため、機関車番号が整理され、1形は一時的に2号と4号に改番されました。しかし、1908年の縦貫線全通を前に、1905年に元の番号に戻されています。

配置と変遷

配置は台北を中心に、苗栗、台中、基隆、嘉義と各地を移動しました。最終的には彰化と高雄に配置され、1924年に廃車となりました。廃車後、1号機関車「騰雲」は台湾初の機関車として、9号機関車とともに台北博物館に保存されることになりました。

現在

「騰雲」は、現在台北新公園（二二八和平公園）内に保存されており、2003年にはガラス張りの専用保存館に移設され、その姿を一般公開されています。また、2009年には実物大のレプリカが中国で製作され、台湾での運転を目指したことも話題となりました。

主要諸元

全長：6,477mm
全高：3,461mm
全幅：2,184mm
軌間：1,067mm
車軸配置：0-4-0(B)
弁装置：アラン式
シリンダー（直径×行程）：292mm×406mm
ボイラー圧力：7.0kg/cm2
火格子面積：0.52m2
全伝熱面積：34.84m2
機関車運転整備重量：16.41t
機関車動輪上重量（運転整備時）：16.41t
水タンク容量：1.58m3
燃料積載量：0.6t

参考文献

寺島京一「台湾鉄道の蒸気機関車について」1988年 レイルNo.23 エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊 ISBN 4-87112-173-9
金田茂裕「ホーエンツォレルンの機関車」1994年 機関車史研究会刊

外部リンク

台湾黄昏地帯　台北
二二八和平公園内SL展示室（旅々台北.com内）

1形蒸気機関車「騰雲」は、台湾の鉄道史における重要な遺産として、その歴史を今に伝えています。

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