エリエイ

株式会社エリエイは、鉄道模型愛好家や鉄道ファンにはおなじみの出版社です。同社は、鉄道模型専門誌『とれいん』や、鉄道史を掘り下げる『THE rail レイル』シリーズなどを発行しており、鉄道趣味の世界で確固たる地位を築いています。同社の出版物には、「株式会社エリエイ」という社名ではなく、「エリエイ出版部／プレス・アイゼンバーン」という名称が用いられています。

エリエイのルーツ

エリエイの歴史は、意外なことに半襟商「ゑり栄」として始まりました。創業者は松本栄太郎。その後、呉服商として事業を継続しましたが、4代目の松本謙一が鉄道趣味の出版に情熱を燃やし、仲間とともに「鉄道趣味書刊行会プレス・アイゼンバーン」を立ち上げます。この活動を本格的に商業化するにあたり、「ゑり栄」の法人格を利用し、エリエイ出版部が誕生しました。つまり、エリエイは、呉服商から鉄道出版へと転身した珍しい経歴を持つ企業なのです。

鉄道趣味誌の創刊

1974年、エリエイは、現在の代表取締役である平井憲太郎氏の主導により、鉄道模型月刊誌『とれいん』を創刊しました。創刊号は1975年1月号です。同誌は、単なる模型紹介にとどまらず、「とれいん雑学帖」のようなユニークな連載企画も展開。公衆電話ボックスなど、レイアウトの脇役にもスポットライトを当て、模型製作のヒントを提供しました。また、実物の鉄道に関する情報も充実しており、車両や路線図などの詳細な図面も掲載されています。鉄道模型と実物鉄道の両面から、読者の知的好奇心を刺激する内容が特徴です。

1978年には、国鉄を定年退職した黒岩保美氏を迎え、鉄道月刊誌『レイル』が創刊されます（1978年4月号）。『レイル』は、当初、過去の車両や鉄道を取り上げ、懐かしい鉄道の姿を伝えていました。しかし、月刊での発行は約2年で終了。その後、不定期刊の『THE rail レイル』シリーズとして再出発。こちらは廃線となった鉄道や廃車となった車両など、古い鉄道に焦点を当てています。貴重な記録や写真が満載で、鉄道史を深く学びたい読者にとって欠かせないシリーズとなっています。

書籍出版と豪華本

エリエイは、雑誌だけでなく、書籍の出版にも力を入れています。特に、『草軽電気鉄道』や『寿都鉄道』などの豪華本は、その美しい装丁と詳細な内容で、多くの鉄道ファンを魅了してきました。これらの書籍は、価格も高額ですが、資料的価値も高く、コレクターズアイテムとしての側面も持っています。

エリエイのキーパーソン

現在のエリエイを率いる平井憲太郎氏は、1950年生まれ。東京都豊島区出身で、幼少の頃から鉄道と鉄道模型に親しんできました。立教高校在学中には、アルバイトで『鉄道ジャーナル』の編集に携わり、1968年には友人と鉄道写真集『煙』を出版。立教大学卒業後、株式会社エリエイに入社し、鉄道出版部門を立ち上げ、『とれいん』を創刊しました。また、平井氏の家系も特筆すべきでしょう。祖父は推理小説家・江戸川乱歩、父は心理学者・平井隆太郎という文化的な家系に育っています。平井氏は、日本鉄道模型の会理事長、としまユネスコ協会代表理事、公益財団法人としま未来文化財団評議員も務めるなど、多方面で活躍しています。

主な出版物

雑誌

『とれいん』（月刊）：鉄道模型雑誌の代表格。模型製作のノウハウから実物鉄道の情報まで幅広く網羅。
『THE rail レイル』（不定期刊行）：過去の鉄道に焦点を当てた鉄道雑誌。貴重な写真や資料が満載。

書籍

黒岩保美『草軽電気鉄道』（1989年）：ISBN 978-4871123105。草軽電気鉄道の全貌を詳細に記録した豪華本。
黒岩保美『寿都鉄道』（1984年）：ISBN 978-4871123112。寿都鉄道の歴史と車両を詳細に紹介した一冊。

株式会社エリエイは、単なる出版社ではなく、鉄道趣味文化を牽引する存在です。これからも、魅力的な出版物を送り出し、鉄道ファンを魅了し続けることでしょう。

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