台湾総督府食糧局

台湾総督府食糧局

台湾総督府食糧局（たいわんそうとくふしょくりょうきょく）は、日本の植民地統治下にあった台湾において、その最高行政機関である台湾総督府に設置された内部部局の一つです。特に、当時の台湾の基幹作物であり、日本本土への重要な供給源でもあった米穀の、生産、集荷、流通、そして本土への移出に関わる管理業務を主たる任務としていました。

設置とその変遷

台湾総督府における米穀関連業務は、当初、総督府の殖産局が管轄していました。しかし、日中戦争が長期化し、戦時体制下における食糧統制の重要性が増すにつれて、台湾からの米穀移出、すなわち日本本土への安定供給体制の強化が喫緊の課題となりました。これに対応するため、1939年（昭和14年）7月、殖産局内の米穀関連部署を独立させる形で、新たに米穀局が設立されました。この時点では、米穀の統制・管理業務を専門に行う独立した組織として位置づけられました。

その後、組織は何度か改編と名称変更を経ます。1942年（昭和17年）11月には、その名称が食糧局へと改称されました。これは、管理対象が米穀だけでなく、他の食糧全般にも拡大された可能性を示唆しています。さらに、戦局が厳しさを増す中の1943年（昭和18年）12月、台湾総督府の内部機構が大幅に改編された際、食糧局は廃止され、新たに設置された農商局の内部部局である食糧部へと再編されました。これにより、食糧関連業務は農業生産や商業流通全体を管轄する農商局の一部門として位置づけられることとなります。食糧部は、終戦まで農商局の所掌として存続しました。

組織体制

食糧局およびその前身・後身である米穀局、食糧部における組織構成は、時期によって変化しています。

米穀局時代 (1941年頃)
総務課
米政課
業務課

総務課が総括的な事務、米政課が米穀に関する政策企画や法規制定、価格管理などを、業務課が米穀の集荷や流通、移出の実務を担当していたと考えられます。

食糧局時代 (1942年11月以降)
総務課
米穀課
食糧課

米政課が米穀課に改称され、新たに食糧課が設置されました。これは名称変更と同様に、管理対象の範囲拡大を示すものと思われます。

農商局食糧部時代 (1943年12月以降)
経理課
米穀課
食品課

食糧部としての組織再編により、課構成が変更されました。経理課が独立して設置され、米穀課と食品課が実務を分担したと考えられます。また、食糧部の下には、現場における食糧管理業務を担う食糧事務所が関連する総督府所属官署として置かれていました（米穀局時代は米穀事務所と呼ばれていました）。1945年時点でも、食糧部は庶務課、米穀課、食品課という体制を維持していました。

このように、台湾総督府食糧局およびその関連組織は、短い期間ながら、戦時期における台湾の主要産物の管理、特に日本本土への食糧供給体制を支える上で重要な役割を担った組織でした。

歴代の米穀局長、食糧局長、食糧部長が存在しましたが、具体的な氏名は一般にあまり知られていません。

参考文献として、当時の総督府の公刊物や、植民地官僚制度に関する研究などが挙げられます。

（参照文献例：台湾総督府編『台湾統治概要』、岡本真希子著『植民地官僚の政治史』、秦郁彦編『日本官僚制総合事典』、アジア歴史資料センター公開の公文書など）

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