右胸心

右胸心の概要

右胸心（うきょうしん、英: Dextrocardia）とは、心臓の位置が正常とは異なり、主に右胸腔内に偏った状態を指します。この状態は、心臓の向きや位置によって分類され、通常、心尖部が右側を向いていることが特徴です。発生頻度は約12,000人に1人程度とされています。

右胸心の分類

右胸心は以下のようにいくつかのタイプに分けられます：
1. 孤立性右胸心（英: isolated dextrocardia）
通常の内臓位置と異ならず、心臓だけが右側に位置している状態です。このタイプでは、合併症がある場合があり、特に心血管系や呼吸器系に影響を与えることがあります。

2. 鏡像型右胸心（英: dextrocardia situs inversus）
このタイプでは、心臓が右側にあるだけでなく、全ての腹部臓器が通常と逆の位置に配置されます。この状態は「完全内臓逆位」と呼ばれ、内臓の位置関係が反転します。この場合、先天性心疾患のリスクは残りますが、孤立性右胸心に比べると合併疾患の比率は低めです。

3. 内臓錯位（英: situs ambiguus）に伴う右胸心
こちらは更に複雑で、内臓全体が逆転した状態が見られる場合です。

孤立性右胸心の特徴

孤立性右胸心を持つ患者は、心臓が右側に位置しますが、身体の他の臓器は通常の位置にあります。この場合、心血管や呼吸器系に発達の問題が生じることがあり、肺低形成（心臓の周囲の肺が発育不良になること）などの合併症が見られることがあります。

鏡像型右胸心の詳しい解説

鏡像型右胸心では、心臓と腹部臓器が左右逆の位置にあるため、他の臓器との関係性も重要です。この型では、両大血管右室起始症や房室中隔欠損症等、様々な先天性心疾患が伴うことがあります。特に心血管系や呼吸器系疾患は重篤化する場合があり、注意が必要です。加えて、カルタゲナー症候群という疾患がこの型の患者にしばしば見られ、慢性的な呼吸器感染に悩むことがあります。

診断方法

右胸心の診断は、心電図や胸部X線撮影によって確認されます。特に胸部X線は診断が容易で、心電図でも診断が可能です。右軸偏位など特有の電気軸の変化が観察されると、右胸心の可能性があるとされます。

技術的な要因

心電図の記録において、12誘導心電図の電極配置を誤ることによって、実際には心臓の異常がない場合でも右胸心のような波形が記録されることがあります。この現象は「技術的右胸心（technical dextrocardia）」として知られています。

心電図の取得と除細動

右胸心の患者の場合、心電図を取得する際に、通常の胸部誘導に加えて、右側の胸部に誘導電極を取り付ける必要があります。また、除細動を行う場合は、パッドの位置を左右逆にして設置することで、心臓の位置に対応させることが重要です。

参考文献

• - 循環器病の診断と治療に関するガイドライン（2007−2008年度合同研究班報告）
• - 先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン（更新版2013/7/2）

関連項目

• - 心臓
• - 先天性心疾患

以上のように、右胸心はその状態によって様々な合併症やリスクを伴います。診断と治療においては、専門的な知識が求められます。

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