除細動

除細動（Defibrillation）

除細動は、心臓の不整脈を治療するための手法の一つで、異常な電気信号の経路を遮断し、正常な信号に戻すことを目的としています。この治療法は、不整脈の中でも特に危険な種類である心室頻拍（VT）や心室細動（VF）に対して行われます。さらに、心房細動（AF）や心房粗動（AFL）など、他の不整脈にも応用されることがありますが、心静止の状態では効果がありません。

除細動の目的と効果

除細動の主な目的は、心室細動や無脈性心室頻拍に対して電気ショックを与えることで、心臓の異常な興奮波を抑止し、正常な拍動を取り戻すことです。電流が心臓に流れることで、膜電位が変化し、異常な興奮の連鎖を停止させます。その後、正常な興奮伝導が再開し、心臓が再び規則正しく収縮することが期待されます。

ただし、心静止や無脈性電気活動に対しては効果がないため、適切な状況での使用が求められます。むしろ、胸骨圧迫を中断することで蘇生率が低下する可能性があるため注意が必要です。

除細動の歴史

除細動の基盤は1899年にジュネーヴ大学のPrevostとBatelliによって古典的な研究が行われ、犬の心室細動に電気的ショックを与えることに成功したことから始まります。その後、1947年にアメリカのケースウエスタンリザーブ大学にて、初めて人間に使用され、現在の除細動器の原型が出来上がりました。

除細動器の種類

除細動器にはいくつかの種類があり、特に以下のものが一般的です：

• - 植込み型除細動器（ICD）
• - 自動体外式除細動器（AED）

近年は、従来の単相性の電気ショックよりも二相性の除細動器が主流となりつつあります。二相性のものは、より少ないエネルギーで効果的に除細動が可能とされており、利用が広がっています。

新しい除細動技術

最近では、ナノ秒パルス電場（nsPEF）を活用した除細動法が開発されています。従来の除細動方法は8〜12ミリ秒の電気ショックを通過させるのに対し、この新しい方法は数ナノ秒の変位電流に基づくもので、従来の方法では得られない効果と合併症の軽減が期待されています。2016年には、この新技術に関して特許が出願されました。

薬理学における除細動

除細動には、抗不整脈薬を用いる薬理学的なアプローチも存在します。主にIa、Ib群およびIII群の薬剤が使用されており、具体的にはリドカインやアミオダロンなどが挙げられます。

関連項目

除細動に関連する項目として、心肺蘇生法（CPR）、一次救命処置（BLS）、二次救命処置（ACLS）、循環器学などがあり、これらは心臓の緊急時に重要な知識と技術を持つことが求められます。

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