司太夫

司太夫（つかさ・たゆう）

司太夫は、本名を中川幸永（なかがわ ゆきえ）といい、京都の伝統文化を今に伝える嶋原の太夫として知られています。京都市山科区に生まれた彼女は、華やかな花街の世界で独自の足跡を刻んできました。長女の葵太夫（朱伽）もまた太夫であり、タレントとしても活動しています。

幼少期から、日本の伝統的な芸事である日本舞踊、茶道、華道、そして箏などに親しみ、その素養を育んできました。中学卒業後、さらなる高みを目指し、祇園甲部の置屋である「西村」に入り、舞妓となるための厳しい修業の日々を送りました。そして、16歳という若さで念願の舞妓としてお披露目（店出し）を果たし、芸名を「奈見子（なみこ）」と名乗って活躍しました。

祇園甲部で舞妓としての年季を終えた後、司太夫のキャリアは思いがけない方向へと展開します。かつて京都を代表する花街として栄え、現在はかつての姿を残しつつも規模を縮小している嶋原。その嶋原に唯一現存する置屋兼お茶屋である『輪違屋』の当時の女将から声がかかりました。女将は、太夫の一人が辞めることになったため、司太夫に嶋原の太夫になることを打診したのです。この申し出を受け、23歳にして司太夫は嶋原の太夫となることを決意。「司太夫」と名を改め、嶋原の伝統を背負う新たな道を歩み始めました。

太夫としての本業を務める傍ら、司太夫は多岐にわたる活動を展開しています。テレビやラジオ番組への出演、講演会などを通じて、嶋原の歴史や文化、そして自身が経験してきた花街の現実について広く発信しています。特に、2001年には嶋原で太夫を指す言葉である『こったい』を冠した新聞を創刊。当初は限られた読者への配布でしたが、その内容が評判を呼び、口コミで全国に購読者が広がるほどの反響を得ました。同年12月には、嶋原の年中行事として12年間途絶えていた「餅つき」を自身の尽力により再興させ、伝統文化の継承にも大きな役割を果たしました。

さらに、2009年10月には自身の店舗「こったいの店 司」を開業し、活動の場を広げました。2014年公開の映画「舞妓はレディ」では、京都ならではの言葉遣い（京言葉）や花街の立ち居振る舞い（所作）の指導にあたるなど、文化伝承の側面でも貢献しています。2015年時点では、長年籍を置いていた輪違屋から独立し、現在は屋形「末廣屋」の女将としても手腕を発揮しています。

このように、司太夫は嶋原太夫としての伝統的な活動に加え、メディアや自身の事業を通じて、花街文化の理解促進や継承に情熱を注いでいます。その経験や知識は、著書にインタビューが掲載されたり、新聞に連載を持ったりするなど、様々な形で発信されており、現代における花街文化の貴重な担い手として注目を集めています。

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