司祭枢機卿

司祭枢機卿とは

司祭枢機卿（しさいすうききょう、羅: cardinalis presbyter、英: Cardinal priest）は、カトリック教会の枢機卿における位階の一つであり、枢機卿団の中で最も多い人数を占める位階です。位階としては、司教枢機卿の下、助祭枢機卿の上に位置しますが、これはあくまで名称上の区別です。

歴史的背景

本来、司祭枢機卿は文字通り司祭である枢機卿を指していました。しかし、より正確には「枢要司祭」と呼ぶべき存在であり、ローマの重要な教会の教区司祭が教皇の顧問として任命されたことが始まりです。これらの司祭と周辺教区の司教、そしてローマの主要な教会で働く助祭たちが、教皇の側近としての役割を担う最初の枢機卿団を形成しました。

初期の教皇は、ローマに在住する司祭の中から選ばれていました。これは、使徒ペトロからの継承性を維持するためでした。伝統的に、ローマの司教である教皇を司教として叙階する役割は、オスティアの司教枢機卿に委ねられていました。枢機卿の資格は、当初はローマ在住の司祭、助祭、周辺教区の司教に限定されていましたが、歴史の中でその範囲は広がっていきました。

名義小教区

現代においても、枢機卿は伝統に従って名義上の小教区を与えられています。しかし、パウロ6世以降、これらの教会の司牧の任務は解除され、純粋に名義上のものとなっています。これらの小教区の中には、2世紀から枢機卿の名義教会であり続けているものもあります。

枢機卿団の拡大と改革

ローマ帝国時代からルネサンス期まで、枢機卿団は小規模であり、枢機卿の数は名義教会よりも少ないこともありました。16世紀に入ると、教皇権の伸長とともに枢機卿団は教皇宮廷の貴族としての性格を帯びるようになり、規模が拡大しました。この状況を憂慮した教皇シクストゥス5世は、1587年に枢機卿の人数を70人に制限しました。この制限は1958年まで守られましたが、名義教会は老朽化や移転によって徐々に減少しました。

教皇ヨハネ23世は、枢機卿団の改革に取り組み、まず70人の枠を撤廃しました。そして、枢機卿の名義教会のリストを再編成しました。この改革は、パウロ6世からヨハネ・パウロ2世へと引き継がれ、ローマにある300の教会のうち、150が名義教会に指定されました。

首席司祭

司祭枢機卿の中で最も長く務めている枢機卿は、枢機卿団の首席司祭と呼ばれます。かつては教皇選挙において特別な役割を果たしましたが、現代では80歳以上の枢機卿が選挙から除外されるため、その役割は限定的です。2018年現在の首席司祭は、元バンコク大司教のマイケル・ミーチャイ・キットブンチュー枢機卿です。

現代の司祭枢機卿

現代では、司祭枢機卿のほとんどが世界各地の重要な教区出身の司教や教皇庁に務める高位聖職者です。10年間助祭枢機卿を務めた者は、希望すれば司祭枢機卿に昇格することができます。かつては司祭であることが条件でしたが、1918年以降、すべての枢機卿は司教であることが必須条件となりました（ただし、80歳以上の司祭が名誉的に枢機卿に親任される場合、例外的に司教叙階が特例で許されることがあります）。

関連項目

* 枢機卿団

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