各務鑛三

各務鑛三：日本のガラス工芸に新たな地平を開いた巨匠

各務鑛三（かがみ こうぞう、1896年3月3日-1985年12月3日）は、20世紀を代表する日本のガラス工芸家であり、カガミクリスタルの創業者として知られています。岐阜県多治見市出身の彼は、卓越した技術と芸術性を融合させた作品の数々で、日本のガラス工芸史に大きな足跡を残しました。岩田藤七氏と共に、ガラス工芸を美術工芸の領域へと高めた功績は、高く評価されています。

教育と研鑽：才能を磨く若き日々

各務鑛三の芸術家としてのキャリアは、愛知県立瀬戸陶器学校（現在の愛知県立瀬戸工科高等学校）卒業後、東京高等工業学校（現在の東京理科大学）附設工業教員養成所工業図案科選科へと続きます。同校では、後に日本の近代デザイン界を牽引することとなる芹沢銈介氏や濱田庄司氏らと交流し、生涯にわたる友情を育みました。卒業後は東京高等工業学校の雇員、嘱託教員として勤務。その後、平野耕輔氏の移籍に伴い南満州鉄道窯業試験所へ入所し、更なる研鑽を積みました。

ドイツ留学：国際的な視点と技術の習得

1927年、各務鑛三はドイツのシュツットガルト美術工芸学校へ留学します。ウィルヘルム・フォン・アイフ校長のもとで研鑽を積み、ハンス・モデル氏ら同世代の優れた芸術家たちとの交流を通して、国際的な視点と高度な技術を習得しました。このドイツ留学は、彼のガラス工芸における表現力と技術力の向上に大きく貢献したと言えるでしょう。

カガミクリスタルの創業：日本のガラス工芸産業をリードする

1929年に帰国した各務鑛三は、1930年に滝野川に各務クリスタル工芸硝子研究所を設立。独立後、1932年には第13回帝展に入選、1934年には西六郷に各務クリスタル製作所（後のカガミクリスタル）を設立しました。彼は、日本初のクリスタルガラス専門の一貫生産工場を整備し、日本のガラス工芸産業の近代化に大きく貢献しました。

数々の受賞と栄誉：国際的な評価と功績

各務鑛三の才能は、国内外で高く評価され、数々の受賞歴を誇ります。1934年には第15回帝展で特選を受賞、1937年のパリ万国博覧会、1939年のニューヨーク万国博覧会でもそれぞれ銀賞と名誉賞を受賞しました。その後も、1953年の芸術選奨文部大臣賞、1958年のブリュッセル万国博覧会グランプリ、1960年の日本芸術院賞など、数々の栄誉に輝きました。これらの受賞は、彼の卓越した技術と芸術性を証明するものです。

各務鑛三の功績：日本のガラス工芸の未来への貢献

各務鑛三は、単なるガラス工芸家としてだけでなく、日本のガラス工芸産業の発展に大きく貢献した人物です。彼の技術革新と芸術性は、後世のガラス工芸家たちに大きな影響を与え、日本のガラス工芸の国際的な地位向上に繋がる結果となりました。カガミクリスタルは、現在でも日本の代表的なガラスブランドとして、世界中の人々を魅了し続けています。各務鑛三の功績は、日本のガラス工芸の歴史に永遠に刻まれるでしょう。

著書

彼の業績を後世に伝えるために、『硝子の生長』（七丈書院、1943年）を執筆しています。この著書は、各務鑛三のガラス工芸に対する情熱と深い知識を伝える貴重な資料となっています。

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