合奏 (ティツィアーノ)

ティツィアーノの初期傑作『合奏』

『合奏』（または『中断された合奏』）は、イタリア盛期ルネサンスのヴェネツィア派を代表する画家、ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1510年頃に制作した油彩画です。キャンバスに描かれたこの作品は、画家の初期の作風を示しており、同時代の画家ジョルジョーネからの影響が色濃く見られます。現在、フィレンツェのパラティーナ美術館に所蔵されており、ローマのボルゲーゼ美術館には複製が存在します。

絵画の詳細

本作には、音楽を演奏するために集まった3人の男性が描かれています。中央の男性は、毛皮の縁取りのある濃い青色のマントを羽織り、16世紀のハープシコードであるスピネットを演奏しています。彼の指は鍵盤の上にありますが、顔と視線は左側のドミニコ会修道士に向けられています。修道士はヴィオラ・ダ・ガンバを身体の横に置き、中央の男性の注意を引くかのように肩に触れています。3人の中で唯一視線を外している左側の若い男性は、羽根飾りの付いた帽子を被り、かすかな笑みを浮かべています。この帽子は当時、大胆さや雄々しさを象徴するファッションアイテムとして人気がありました。

3人の人物を歴史上の人物として特定することは困難です。当時の著名な音楽家であると主張する研究者もいますが、ティツィアーノが「合奏」というテーマを表現するために創造した架空の人物であると考える研究者もいます。音楽は、15世紀末から16世紀初頭にかけて、紳士教育に不可欠な要素であり、この時代に「合奏」は人気のあるテーマでした。絵画から、楽器の音色が聞こえてくるかのような臨場感があります。

作品の歴史

1678年、歴史家のカルロ・リドルフィは、ヴェネツィアのパオロ・デル・セーラのコレクションに本作と類似した作品があったと記録しています。1654年には、レオポルド・デ・メディチ枢機卿がジョルジョーネの作品として購入したことが記録されています。枢機卿のコレクションは、後にトスカーナ大公国のコレクションと統合されました。

本作は過去に、セバスティアーノ・デル・ピオンボやジョヴァンニ・カリアーニの作品とされていましたが、1896年にジョヴァンニ・モレッリによってティツィアーノの作品であると最初に指摘されました。現在では、この帰属は広く認められています。1976年から1978年にかけて行われた修復作業では、絵画の上部に追加されていた部分が除去されました。この修復によって、作品の制作年代は1521年頃から1555-1589年頃とされたこともありますが、現在ではパラティーナ美術館によって、ティツィアーノの初期である1510年頃とされています。

指揮者のブルーノ・ワルターは、グスタフ・マーラーが自身の家の壁にこの絵画の複製を飾っていたと述べています。ワルターは、1930年代にはこの絵画をティツィアーノではなくジョルジョーネの作品とみなしていました。ワルターは、マーラーの書斎で『合奏』を見た際、演奏を中断して振り返ろうとする修道士の姿がマーラーに似ていると感じたことを語っています。

作品の意義

『合奏』は、ティツィアーノの初期の才能を示す作品であるとともに、当時の文化的な背景を映し出す重要な作品です。音楽が教育に不可欠な要素であった時代に、音楽を奏でる人々の姿を生き生きと描くことで、鑑賞者を当時の世界へと誘います。この絵画は、音楽と絵画という異なる芸術形式の融合を象徴するだけでなく、人間の感情や関係性を深く考察する機会を提供しています。

外部リンク

パラティーナ美術館公式サイト, ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『合奏』 (英語)

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