吉國一郎

吉國 一郎について

吉國一郎（よしくに いちろう、1916年9月2日 - 2011年9月2日）は、日本の商工業と法制度の分野で顕著な貢献を果たした官僚であり、極めて影響力のある公職者でした。正三位の位階を有し、内閣法制局長官や第9代プロ野球コミッショナーとしても知られています。神奈川県出身で、東京帝国大学を卒業した彼は、官僚としてのキャリアを1940年に商工省に入省することでスタートさせました。

来歴と官僚時代

吉國は旧制東京高等学校を経て東京帝国大学に入学し、1940年に商工省に加わりました。その同期には熊谷典文や国井真、小島慶三、加藤悌次などの著名な官僚がおり、彼はその後日本の法令審査に関与することになります。戦後、通商産業省からの出向を経て、内務省が解体されて総理府に移ります。彼は法制局において多くの重要な職務を歴任し、法制局長官総務室の主幹、法制局第三部長、内閣法制局第一部長、内閣法制次長を歴任しました。

内閣法制局長官としての功績

1972年、吉國は第1次田中角榮内閣の下で内閣法制局長官に任命され、以後4年半にわたり田中首相と三木首相に仕えました。1973年の参議院での発言では、天皇の元首としての地位について議論を呼ぶ声明をし、現行憲法のもとでは天皇が元首とは言えないが、日本は立憲君主制であると述べました。この発言は憲法学の観点からも注目されるものであり、吉國の法的見解が反映されています。

退官後の活動

退官後は、三木内閣の改造に伴い法制局長官を辞任し、その後は多くの企業や団体の顧問や相談役として活躍しました。地域振興整備公団の総裁や、日本電信電話公社経営委員長を務め、1977年には総理府の私的諮問機関である公営競技問題懇談会の座長を務めました。1979年に公営競技の場外発売所の新設を認める答申をまとめ、重要な決定を下しました。

プロ野球コミッショナーとしての役割

1989年、吉國は日本野球機構の第9代コミッショナーに就任しました。彼はアマチュア野球とプロ野球の垣根を取り除く努力をし、学生野球からプロ入りするための規則の整備に尽力しました。しかし内部改革においては選手側と経営者側の対立に苦しむことも多く、1993年から逆指名制度やフリーエージェント制度を導入することに至りました。国際化にも積極的で、日米野球や日韓野球を開くことに貢献しましたが、メジャーリーグ挑戦に否定的だったが、後に野茂英雄を称賛しました。

晩年と死去

吉國は95歳で東京都渋谷区の自宅で肺炎により死去し、没日には正三位を昇叙されました。彼の父、吉國兼三は逓信省の官僚、弟の二郎は大蔵事務次官を務めた他、横浜銀行の頭取となっています。吉國一郎はその法務とスポーツの貢献により広く認められ、1999年には野球殿堂入りを果たしました。彼の多彩な経歴は、日本の商工業と法律、そしてスポーツ界において重要な足跡を残しました。

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