吉岡誠明

吉岡誠明 その生涯と働き

吉岡誠明（よしおか せいめい）は、1873年5月4日に生まれ、1940年10月19日にその生涯を終えた、日本のキリスト教界、特に日本メソヂスト教会において重要な足跡を残した牧師です。

彼は長崎県諫早市の郊外にある久山の地で、吉岡藤蔵氏の次男として生を受けました。少年期から青年期にかけて、郷里に近い教育機関であるカブリ英和学校（現在の鎮西学院）に学び、そこでキリスト教の教えと深く触れ合う機会を得ることになります。この経験が、彼の将来の道筋を決定づける大きな転換点となりました。

1893年にカブリ英和学校を卒業した後、吉岡誠明は更なる研鑽を積むため、東京の青山学院へと進学します。青山学院では熱心に神学や関連分野を学び、1897年に卒業しました。この学び舎で苦楽を共にした同級生の中には、生江孝之、小室篤次、三浦金吉といった、後に日本のキリスト教界で要職を担う人物たちがいました。彼らとの交流は、伝道者としての志を一層確固たるものにしたことでしょう。

青山学院在学中から、吉岡誠明は実践的な伝道活動を開始していました。卒業を控えた頃、彼は福岡県の若松（現在の北九州市若松区）へ赴き、精力的に福音を伝えました。その努力は実を結び、若松の地に教会を設立するという成果に繋がります。これが現在の若松松ノ町教会の始まりとされています。

伝道者としての経験を積む一方で、彼はさらなる学識と視野を広げるため、アメリカへの留学を決断します。渡米後、彼はドルー神学校で専門的な神学教育を受け、その後、コロンビア大学に進みました。コロンビア大学では、特にサンスクリット語やインド哲学といった、当時としては高度かつ比較的なじみの薄い分野の研究に励みました。これは、異文化や異なる思想体系に対する深い探求心を示しています。しかし、留学中に体調を崩し、やむなく日本へ一時帰国することになりました。幸いにも回復し、その後再びアメリカへ渡り、ポートランド教会で約8年間にわたり牧師として奉職しました。

約8年に及ぶ海外での牧会経験を終え、吉岡誠明は日本へと帰国します。帰国後は、日本メソヂスト教会の中心的な教会を次々と歴任しました。青山学院に隣接する青山学院教会（現在の日本基督教団経堂緑岡教会）、三田教会（現在の銀座教会の一部に連なる）、そして銀座教会など、都市部の主要な教会で牧師を務め、多くの信徒の信仰生活を導きました。これらの教会での働きは、彼の牧会者としての力量を高く評価されていたことを物語っています。

吉岡誠明の活動は、個別の教会での牧会に留まりませんでした。日本メソヂスト教団の中央においても重要な役割を果たしました。1921年からは東北地方における教団の活動を統括する東北部長に就任し、広大な地域の伝道と教会形成の推進に尽力しました。さらに1933年には伝道局長という教団内の枢要なポストに就き、教団全体の伝道方針の策定や実行において中心的な指導力を発揮しました。

晩年に至っても、彼の伝道にかける情熱は衰えることがありませんでした。1936年には、自身が居住していた東京の世田谷の自宅を開放し、新たな教会を開拓しました。この教会は、現在の日本基督教団玉川平安教会の礎となっています。自宅を拠点とした教会形成は、地域に根差した親密な伝道を志向する彼の姿勢を表しています。

吉岡誠明は、その生涯を通じて、故郷でのキリスト教との出会いから始まり、国内外での学び、そして多くの教会や教団での指導的役割に至るまで、常に伝道と牧会に捧げられた人生を歩みました。彼の活動は、激動の時代における日本のキリスト教、特に日本メソヂスト教会の発展において、確かに重要な一頁を刻んでいます。

参考文献：

• - 『日本キリスト教歴史大事典』教文館、1988年

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