吉岡酒造場

吉岡酒造場

吉岡酒造場（よしおかしゅぞうじょう）は、京都府京丹後市弥栄町にある酒造メーカーで、地域の伝統に根ざした酒造りを行っています。代表銘柄として知られる「吉野山」は、丹後半島中央部に位置する吉野山系に由来します。吉岡酒造のある溝谷外村は、溝谷神社を有する歴史的な集落で、清らかな水が流れ、周囲には果樹や水田が広がっています。この豊かな環境が、質の高い日本酒の生産を支えています。

歴史の歩み

吉岡酒造場は1789年（寛政元年）に初代・吉岡直七により創業されました。酒造りには、杜氏と溝谷の蔵人が手を携えて行う伝統を守り続けています。2022年現在、8代目の吉岡直昭が蔵の活動を引き継いでおり、2002年に杜氏としての道を歩み始めました。

この酒蔵では、地元で収穫された米と清流の水を使用した、100パーセント地産の酒造りが行われています。蔵人たちは、手掛ける量を制限しながら、土地に根ざした酒造りの技を受け継ぎ、丹後杜氏の伝統を守ることに注力しています。2005年に組合が消滅した後も、昔ながらの日本酒らしい味わいを大切にしながら、流行を無視した安定感ある酒を製造し続けています。

また、小規模の生産体制のため、流通量は限られており、一部のファンには「幻の酒」として知られていますが、2021年には公式オンラインショップを開設し、より多くの人々に親しまれる機会を提供しています。

特徴的な酒造り

吉岡酒造場で使用される主な酒造米は「山田錦」、「五百万石」、「祝」の3種類です。また、掛米には京都府産の「京の輝き」を使用します。早生米は使用せず、じっくりと選ばれた米で酒を醸します。最大の特徴は酒造りの際に全量を昔ながらの木槽を用いて手作業で搾る点です。約10リットルずつ酒袋に詰め、重石をかけてゆっくりと2日間をかけて圧搾することで、雑味のない上品な酒に仕上がります。この独特な製法によって、しっかりした酒粕も得られ、その品質の高さが口コミで広がっています。

金剛童子山の伏流水は、酒造りにも使用され、そのおかげで酒は口当たりが柔らかなのが特徴です。また、醸造アルコールを使用しない品も取り揃えています。

製品ラインナップ

代表銘柄「吉野山」は、10種類の特徴的な日本酒を展開しており、京都市内や丹後地方で販売されることが多いです。一般的には、加悦谷産の「祝」を原料にした精米60パーセントのやや辛口の日本酒が親しまれています。また、特に幻の酒と称される「純米酒 吉野山」は、少品種少量醸造によって生み出されています。

さらに、大吟醸「超特撰大吟醸」は、精米率40パーセント以下で低温発酵させ、まろやかな口当たりとフルーティーな味わいが楽しめる冷酒です。その他にも、中辛口の「上撰」や、五百万石を100パーセント使用した「純米特別」など多彩な選択肢があります。

地元との関わり

酒造場の敷地内には、小川が流れ、サワガニやカジカなどの生物も見られます。地域とのつながりを大切にし、地元住民とともに発展してきたこの酒蔵は、今後も京都府の地酒文化を支える存在であることでしょう。営業は不定期ですが、朝9時から夕方6時までオープンしています。訪問者は酒の魅力を感じながら、豊かな自然と歴史溢れる環境を楽しむことができるでしょう。

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