吉川仁

吉川 仁

1947年に長野県岡谷市に生まれた吉川仁氏は、日本の都市計画および防災対策分野における主要な専門家の一人です。現在、首都大学東京の特任教授として教鞭を執りながら、安全で持続可能な都市空間の実現に向けた研究と実践を続けています。

経歴

幼少期を長野で過ごし、地元の諏訪清陵高等学校を卒業後、東京大学に進学しました。同大学工学部の都市工学科で専門的な知識を修得し、さらに大学院へと進み研鑽を積みました。大学院修了後は、株式会社防災都市計画研究所に入社。ここでは主任研究員としてキャリアをスタートさせ、やがて代表取締役に就任するなど、要職を歴任しました。その後、1995年には自らの知見と経験を活かすべく、防災&都市づくり計画室を設立し、独立した立場から多様な都市づくりのプロジェクトに関わることとなります。

主な活動と業績

吉川氏の活動は広範にわたります。特に、東京都や各特別区における防災都市づくり計画の策定においては中心的な役割を果たし、大規模災害に強い都市構造の構築に貢献してきました。また、具体的な地域のまちづくりにも深く関与しており、例えば国分寺市の高木町や本多地区、杉並区の蚕糸試験場跡地周辺、品川区の林試の森公園周辺、板橋区の弥生町、豊島区の池袋本町など、多岐にわたる地域で住民や行政と協力しながら、その土地固有の課題解決と魅力向上を目指した活動を行っています。これらのプロジェクトを通じて、単なる物理的な計画にとどまらず、地域コミュニティの活性化にも注力しています。

さらに、ユニークな取り組みとして、杉並区の「知る区ロード」や世田谷区の「楽働クラブ」などを手がけ、人々がまちと積極的に関わり、楽しむことを通じて地域への愛着を育む「まち遊び」の研究と実践にも力を入れています。専門家としての裏付けとして、都市及び地方計画の分野で技術士の資格を有しており、その知識と経験は高く評価されています。また、後進の育成にも熱心で、かつては東京都立大学（旧体制）や芝浦工業大学で講師を務め、多くの学生に専門知識を伝えてきました。

著作

吉川氏は、都市計画や防災に関する著作も発表しており、専門家だけでなく広く関心を持つ人々に向けた情報発信を行っています。主な著書には、高見沢邦郎氏との共編著である『居住環境整備の手法－まちをデザインする』（彰国社、1989年）があり、まちづくりの具体的な手法について詳述しています。また、単著としては、長年の経験に基づく知見を集約した『安全と再生の都市づくり』（学芸出版社、1999年）があり、防災の視点から見た都市の課題と再生への道筋について論じています。これらの著作は、都市計画分野における重要な文献となっています。

まとめ

吉川仁氏は、生まれ育った日本において、防災を核とした都市の安全確保と、そこに暮らす人々の生活の質の向上を目指す都市づくりに、理論と実践の両面から深く関わってきました。長年の経験と独自の視点から展開される活動は、現代日本の都市が抱える多くの課題に対し、示唆に富む解決策を提示しています。現在も首都大学東京での教育活動や、具体的なまちづくりプロジェクトへの関与を通じて、日本の都市の未来に貢献し続けています。

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