吉成正一

吉成正一：一枚の写真に刻まれた阿波の魂

吉成正一（よしなり しょういち）は、1926年（大正15年）8月22日に兵庫県神戸市に生まれ、2020年（令和2年）2月26日に93歳で生涯を閉じた写真家です。徳島県を拠点に、写真家としてだけでなく実業家としても活躍しました。神戸市立兵庫商業高等学校を卒業後、写真の世界へ足を踏み入れ、その人生は波乱に満ちながらも、写真への情熱に支えられたものでした。

戦火を乗り越え、左手一本で掴んだ光

1937年（昭和12年）に神戸市で吉成写真館を開業。しかし、1943年（昭和18年）に海軍航空隊へ入隊し、第二次世界大戦で右手を失うという悲劇に見舞われます。さらに、片目の視力もほとんど失ってしまうという困難を乗り越え、左手だけでカメラを操り、写真家としての道を歩み続けました。

1945年（昭和20年）には徳島県徳島市で吉成写真館を再開。1977年（昭和52年）にはヨシナリ写真スタジオと改称し、新たなスタートを切りました。1950年（昭和25年）には、徳島県を訪れた昭和天皇の撮影という栄誉にも浴しています。

阿波の文化を愛し、人々を写す

吉成正一のライフワークは、阿波おどりや徳島県内外の著名人などの写真撮影でした。写真集『阿波の女』や『阿波の人』に代表されるように、阿波の風土や人々の息吹を捉えた作品は、多くの人々に感動を与えました。個展も開催し、その作品世界を広く紹介しました。

地域文化への貢献と数々の栄誉

2012年（平成24年）には、田中眞紀子文部科学大臣より地域文化功労賞を受賞。2014年（平成26年）には、徳島県文化賞を受賞するなど、その功績は高く評価されました。徳島県市町村文化協会連絡協議会会長や徳島市文化協会会長、二科会写真部特別会員などを歴任し、地域の文化振興に尽力しました。

主な著書

『阿波の木偶』（1979年、創思社）
『阿波の女 : 吉成正一写真集1』（1985年11月1日、ヨシナリ写真スタジオ）
『阿波の女 : 吉成正一写真集2』（1994年6月、ヨシナリ写真スタジオ）
『阿波の人 2』（2014年10月、吉成正一）

吉成正一は、戦争で負った傷を乗り越え、写真を通して阿波の文化と人々の心を捉え続けた不屈の写真家でした。その作品は、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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