吉松安弘

吉松 安弘

吉松 安弘（よしまつ やすひろ）は、1933年11月24日に東京都で生まれた、日本の著名な映画監督であり、脚本家、さらにはノンフィクション作家としても知られる多才な人物です。また、教育者として帝京大学で教授を務め、表象文化や比較民俗学を専門分野として研究にも尽力しました。

来歴

東京に生を受けた吉松氏は、1957年に東京大学教育学部を卒業後、日本の映画界の礎の一つである東宝撮影所に入社しました。ここでは助監督として、黒澤明をはじめとする多くの名匠のもとで映画制作の基礎から応用まで、貴重な経験を積みました。特に、黒澤明監督の現場で研鑽を積んだことは、その後の監督としてのキャリアに大きな影響を与えたと考えられます。

助監督として長年のキャリアを積んだ後、1973年に東宝と映画監督としての契約を結び、撮影所を退社しました。そして同年、映画『さえてるやつら』を発表し、念願の監督デビューを果たします。青春群像を描いたこの作品で、彼は独自の演出手腕を示しました。

監督として活動する傍ら、その視野を広げるため、1976年には文化庁芸術家在外研修員に選ばれ、ニューヨーク大学などを訪れて海外での知見を深めました。この経験は、その後の創作活動や学術研究にも影響を与えたことでしょう。

映画界での活動に加え、吉松氏は脚本家として自身の監督作品などの脚本を手がけたほか、ノンフィクション作家としても筆を執り、複数の著作を発表しています。その幅広い活動は、映画という枠を超えた表現への意欲を示しています。

後年には、帝京大学短期大学の情報ビジネス学科において教授として教鞭を執り、自身の専門である表象文化や比較民俗学の知見を活かしながら、後進の育成と学術研究に貢献しました。教育の現場でも活躍する一方で、日本映画監督協会の理事を務めるなど、日本の映画界全体の発展にも尽力しました。

著書

ノンフィクション作家としても活躍した吉松安弘氏は、以下の単行本を出版しています。

『やさしい天使たち』（PHP研究所、1979年）
『東條英機暗殺の夏』（新潮社、1984年／新潮文庫、1989年） - ノンフィクション作品として注目を集めました。
『バグダッド憂囚』（新潮社、1989年／PHP研究所、2003年）
『旧制高等学校生の青春彷徨』（彩流社、2012年） - 戦中・戦後の旧制高校生たちの青春を描いた作品です。

論文については、国立情報学研究所のデータベースにも収録されており、学術的な貢献も行っています。

映像作品

吉松氏は監督としてだけでなく、助監督や助手としても多くの作品に携わりました。彼のキャリアを形作った主な映像作品は以下の通りです。

助手として参加

『用心棒』（1961年、監督：黒澤明） - 世界的に評価される黒澤作品に助手として関わりました。
『弾痕』（1969年、監督：森谷司郎）
『日本一のヤクザ男』（1970年、監督：古澤憲吾）

助監督として参加

『学園祭の夜』（1970年、監督：堀川弘道）
『恋人って呼ばせて』（1971年、監督：渡辺邦彦）
『若大将対青大将』（1971年、監督：岩内克己） - 人気シリーズの一作に助監督として参加しました。

監督作品

『さえてるやつら』（1973年） - 監督デビュー作。
『陽のあたる坂道』（1975年） - 石坂洋次郎原作の著名な文学作品を映画化。
『神様なぜ愛にも国境があるの』（1979年）

テレビドラマ

『東條英機暗殺』（1984年） - この作品では監督と脚本を担当し、松本清張が監修を務めました。

吉松安弘氏は、映画制作の実践者として長年活躍する一方で、ノンフィクション作家として社会や歴史を見つめ、さらには大学教授として専門知識を後世に伝えるなど、多岐にわたる活動を通じて日本の文化・芸術に貢献しました。

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