吉田拳畤

吉田 拳畤（よしだ けんじ、本名：吉田 健司）は、1977年2月10日生まれの元プロボクサー。宮崎県西諸県郡高原町出身で、宮崎県立小林工業高等学校を卒業している。キャリアを通じてワタナベボクシングジムと笹崎ボクシングジムに所属し、第50代日本フライ級王座を獲得した実力者である。しかし、その競技人生は順風満帆なものではなく、幾多の試練と議論を伴った。

プロキャリアは1999年1月27日、本名の吉田健司としてワタナベジムからスタートした。デビュー戦では1ラウンドKO勝利を飾ったものの、その後3連敗を経験。しかし、そこから立ち直り5連勝を飾り、6回戦へと階級を上げた。

2001年4月24日、初の6回戦で判定勝利を収めた直後、大きな悲劇に見舞われる。同年7月30日にオートバイによる交通事故に遭遇し、下半身不随の可能性も指摘されるほどの重傷を負ったのだ。これにより、約3年間リングから離れることを余儀なくされた。

長いリハビリを経て、2004年11月27日に笹崎ジムへ移籍し、ボクシングへの復帰を果たした。復帰戦を見事に6ラウンド判定で勝利し、その健在ぶりを示した。その後もキャリアを積み重ね、後の日本王者である清水智信や、世界王者となる坂田健史といった強豪選手との対戦を経験した。

特に2006年5月15日の坂田健史戦では、試合内容では優位に進めているように見えながらも、不可解な採点により負傷判定負けを喫し、大きな議論を呼んだ。この試合でのジャッジの一人が、他の二者と比べて著しく偏った採点を下したことが問題視された。

2007年、吉田はキャリアの頂点を迎える。同年4月1日、日本フライ級王者であった内藤大助の負傷に伴い設けられた暫定王座決定戦に出場。久高寛之を10ラウンド判定で破り、笹崎ジムにとって14年ぶりとなる日本王座のベルトを獲得した。そして、4月27日に内藤が王座を返上したことで、正規王者へと昇格した。

王者として最初の防衛戦は、元OPBF東洋太平洋フライ級王者であり世界挑戦経験もある小松則幸を相手に2007年7月2日に行われた。この試合は、吉田が序盤から繰り返し反則行為を行ったことで、そのラフファイトが専門メディアから厳しい批判を受けることとなった。ボクシング専門誌『ボクシング・マガジン』は「ヨシケン、乱心」との見出しで、その戦いぶりを「ボクシングとは言えない行為」と酷評。『ボクシング・ワールド』誌も、小松陣営の「あれではプロテストにも受からないレベル」というコメントを紹介するなど、異例の低評価がなされた。試合自体は大乱戦となり、吉田がスリップ気味ながらもダウンを奪い、6ラウンド負傷判定で勝利を収めた。

続く2度目の防衛戦、佐藤常二郎との対戦もまた荒れた展開となった。ホールドやバッティングが多発し、両者とも出血する試合内容に対し、スポーツ紙も厳しい論調で非難。スポニチは「タイトルマッチのレベルに達していない」、日刊スポーツも「内容はお粗末」「タイトル戦とは思えない」と問題視した。しかし、この試合も吉田は3-0の判定で勝利し、防衛に成功した。

2008年4月14日、3度目の防衛戦で再び清水智信と対戦。この試合では0-3の判定で敗れ、王座から陥落した。その後、リングネームを現在の吉田拳畤へと変更した。

王座陥落後もキャリアを続け、WBC世界スーパーフライ級ランカーの中広大悟と対戦するなどしたが、判定負けを喫した。2008年11月にはリチャード・ガルシア相手にラフファイトによる減点もあり判定負けし、3連敗となった。

連敗を脱出した後、2009年7月からは再びワタナベボクシングジムに所属を戻し、再起を図った。この移籍後初戦を含む数試合を勝利し、日本タイトル挑戦権獲得トーナメント「最強後楽園」にも参戦。準決勝を突破したが、決勝戦では負傷引き分けとなり、優勢点差で敗者扱いとなった。これにより、再び日本王座へ挑む機会を得ることはできなかった。

吉田拳畤は、不慮の事故による長期ブランクを乗り越え日本王座を獲得した不屈のボクサーである一方で、そのラフな試合運びがしばしば批判の的となった、評価の分かれるキャリアを歩んだ選手と言える。

もう一度検索