吉良満貞

吉良満貞（きらみつさだ）について

吉良満貞（きらみつさだ、生没年不詳 - 1384年9月5日）は、南北朝時代の著名な武将であり、吉良氏の祖となる重要な人物です。彼は西条吉良氏（上吉良）の城主であり、幼少期は「三郎」と呼ばれ、通称「上総三郎」として知られていました。また、右京大夫や治部大輔に叙任され、従四位下・左兵衛佐という名誉ある地位も持っていました。

生い立ちと家族

吉良満貞は、足利氏の名門である吉良満義の嫡男として誕生しました。彼は幼いころから父と共に足利尊氏の挙兵に参加し、南北朝の動乱の中で情勢の変化を見極めながら進んでいきました。彼の弟には後に下吉良氏（東条吉良）の祖となる義貴（尊義）が存在し、妻は渋川義季の娘です。また、子どもには吉良俊氏と娘（斯波義将の妻）がいます。

足利直義方としての活動

満貞は強硬な足利直義方として行動し、観応の擾乱の際には直義の死後もその養子である直冬や南朝方と連携し、尊氏に敵対しました。彼らは一時的に京を制圧するほどの勢いを見せましたが、時が経つにつれて局勢が変わり、最終的には満義、満貞の順で幕府へと帰順することになります。

特に満貞が幕府に帰順するのは、畠山国清の失脚が大きなきっかけとされています。1360年、国清は南朝方の攻勢に遭い、軍勢に対抗できず行き場を失って上洛。その結果、康安元年（1361年）、ついには幕府に帰順することになったのです。

幕府復帰後の活動

満貞の忠誠が認められると、康応2年（1362年）には観応の擾乱に際して没収されていた遠江国引馬庄が還付されました。また、同年には三河国竹島で南朝方との戦闘にも参加しました。その後、再開された引付方の頭人に任命され、死去するまでの21年間この職を務めました。

貞治6年（1367年）には天龍寺において起工式にも参加し、将軍の使者としてその重要な任務を果たしました。彼は1384年に生涯を閉じました。法名は道興寺殿中宝省堅大禅定門です。

吉良満貞の逸話

吉良満貞に纏わる逸話の一つには、九州の島津氏の被官である酒匂氏による『酒匂安国寺申状』があります。この記述によると、尊氏の天龍寺供養において満貞が高師兼と並んで随兵として供奉することが決まった際、満貞はそれを嫌がり、結果的に自らの後ろに高師兼が付くようにするという儀礼的な争いがあったことが伝えられています。

実相寺への寄進と文化的貢献

彼はまた、貞治元年（1362年）には吉良氏の菩提寺である実相寺に釈迦三尊像を寄進しています。この際、本尊の胎内には南朝・吉野の情景を詠んだ和歌が収められました。この釈迦三尊像は、1973年に愛知県の文化財に指定されるという重要な文化的意義を持っています。

吉良氏の分裂

吉良氏は名門の血筋であるが故に観応の擾乱時には本宗家と敵対し、その後も対立が続きます。特に父の満義の死去後には、満貞の弟である尊義が東条吉良氏として独立し、満貞とは敵対関係に陥ります。時には合戦を繰り返しながらも和談を経て、尊義は東条吉良氏と認められるものの、それ以降も両者の対立が続くこととなります。これにより、吉良氏は自らの勢力を弱める結果となりました。

吉良満貞の生涯は力強く、複雑な都史と深い家族の関係が交錯しているものといえます。

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