斯波義将

斯波義将：室町幕府を支えた名将

斯波義将（しばよしゆき）は、南北朝時代から室町時代にかけて活躍した武将であり、守護大名です。斯波氏の5代目当主であり、室町幕府創業の功臣である斯波高経の四男として生まれました。彼は、室町幕府の初代、3代、5代、8代の管領を務め、越前、越中、信濃の守護を兼ねるなど、幕府内において非常に重要な地位を占めました。特に、足利義満の時代には、その補佐役として幕府の安定に大きく貢献し、斯波氏の最盛期を築き上げました。

生涯

管領就任と失脚

1350年、斯波義将は斯波高経の四男として誕生しました。父である高経から特別な愛情を受け、11歳で元服し、従五位下治部大輔に叙任されました。当時、幕府では細川清氏が失脚し、執事（管領）が不在となっていたため、13歳という若さで、父高経や佐々木道誉の推薦により執事（管領）に就任し、越前と越中の守護職を与えられました。しかし、若年であったため、実際には父である高経が後見人として幕政を指揮しました。高経の強権的な政治は諸侯や寺社の反発を招き、1366年に起こった貞治の変により、義将は失脚し、越前に退きました。その後、細川頼之が後任の管領に就任し、義将と細川氏との因縁が始まりました。

越中平定と康暦の政変

1367年、父高経が病死すると、義将は上洛し、将軍から赦免されました。1368年、桃井直常が越中に逃亡し幕府に反抗したため、義将は再び越中守護に任じられ、桃井討伐を命じられました。桃井兄弟は、かつて幕府を苦しめた猛将として知られていましたが、義将は北陸勢を率いてこれらを破り、1370年には直常の子を討ち取るなど勝利を収めました。1371年には越中を完全に幕府の支配下に置くことに成功し、その名声を高めました。その後、渋川幸子と結び幕府内での基盤を固め、反細川頼之派の旗頭として台頭しました。1379年、義将は京極高秀ら反頼之派の守護大名と連携し、花の御所を包囲する政変（康暦の政変）を起こし、頼之を失脚させ、自身が管領に再任されました。

幕府の宿老として

管領に復帰した義将は、幕府の機構を整備し、禅僧の統括を図るなど幕府の安定に尽力しました。また、越前を取り戻し、弟の義種が加賀の守護に任じられるなど、斯波氏の勢力を拡大しました。しかし、義満が主導的な執政を行うようになると、義将の政治的立場は微妙なものになり、1391年には管領を辞任しました。その後、細川頼之が死去すると、再び幕政に参与し、1393年には三度管領に就任するなど、生涯で執事・管領職を5回、18年にわたって務めました。義満の死後には、子の義重を管領に推し、自らは宿老として幕政を主導しました。

義満の死後、太上天皇追贈を辞退させ、日明貿易の停止を勧めるなど、義満の政策を批判しました。また、1409年には、出家の身でありながら4度目の管領に就任し、孫の義淳に譲ることで斯波氏による幕政支配を目指しましたが、翌年、死去しました。彼の死は、「当世武門の重人」として多くの人に惜しまれました。義将の邸宅は、室町通の勘解由小路にあったため、勘解由小路殿と呼ばれ、現在もその周辺地域は武衛陣町と呼ばれています。

人物・逸話

義将は、高潔な人格を持ち、正道を誤ることなく、雅にも通じていたとされ、以下のような逸話が残されています。

将軍義満が人の邸宅を取り壊そうとした際、「罪があるなら人を罰すれば良く、邸宅を取り壊すのはいかがなものか」と諫めた。
越中での戦いの際、雪を肴に酒を嗜み、その寒さを忘れた。後に、雪が降るたびに酒を温め鑑賞し、自身を「雪渓」と号した。
和歌を好み、「源氏物語」研究の第一人者である四辻善成を後援したが、善成が増長した際には諫めた。
義満の死後、太上法皇の尊号が贈られる際、「臣下の身でそのような待遇を受けた前例はない」として辞退するよう義持に進言した。
禅宗に深く帰依し、春屋妙葩などの禅僧と親交を深め、五山禅林の整備に協力した。また、連歌や和歌にも長け、文化にも理解を示した。

これらの逸話は、義将が単なる武将ではなく、文化にも造詣が深く、正義感に溢れた人物であったことを示しています。

また、義将は優れた武将、政治家でもありました。越中平定や康暦の政変での活躍は、彼の軍事手腕と政治力を示しており、細川頼之との対立は、当時の政治状況を映し出しています。義満との関係においても、単なる臣下ではなく、意見を述べることができる唯一の存在でした。

官歴

1360年：元服。従五位下治部大輔に任官。
1362年：幕府の執事（管領）、越中守護に任じられる。
1366年：執事（管領）、越中守護を退く。
1368年：越中守護に復する。
1375年：左衛門佐に転任か。
1379年：管領に再度就任。越中守護から越前守護に転任。
1382年：従四位下に昇叙し、左兵衛督に転任。
1387年：信濃守護を兼任。
1391年：管領を退く。
1393年：管領に就任。
1395年：出家し、道将と号す。正四位下に昇叙し、右衛門督に遷任。
1398年：管領、越前守護、信濃守護を退く。
1409年：管領に就任。
* 1409年：管領を退く。

斯波義将は、室町幕府の黎明期から安定期にかけて活躍し、その生涯を通じて、武将、政治家、文化人としての多才な能力を発揮しました。彼の功績は、室町幕府の歴史において重要な位置を占めています。

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