吉野の盟約

吉野の盟約（よしののめいやく）

概要

吉野の盟約は、669年に第40代天武天皇と彼の皇后である鸕野讚良（後の持統天皇）が結んだ宣言です。この盟約において、二人の間に生まれた草壁皇子が次期天皇として扱われることが約束されました。この契りを「吉野の誓い」とも呼ばれることがあります。

679年5月5日、天武天皇と鸕野讚良皇后、6人の皇子が吉野に行幸し、次の日に草壁皇子を次期天皇として擁立することを誓いました。この際、異母兄弟間で互いに助け合い、争わないことを誓い合ったのです。特に志貴皇子がこの盟約の記録に初めて登場しました。

関係人物

• - 天武天皇: 当時の天皇で、皇子の中で4人が彼の子供であり、残りの2人は彼の兄である天智天皇の子です。
• - 鸕野讚良皇后: 天武天皇の皇后で、草壁皇子のみが彼女の子です。彼女は含まれる誓いにも参加しました。

盟約の詳細

天武天皇は草壁皇子をはじめとする皇子たちに対して、互いに協力し合うことを誓わせる「吉野の盟約」を提唱しました。草壁皇子は率先して誓いを立て、他の皇子たちもそれに続きました。さらに天武天皇は皇子を抱きしめ、「この子を次期天皇として支え合え」と感情を示しつつ誓いました。結果的に、天武自身や王妃も同様に誓いを結びました。

背景

天武天皇がこのような盟約を結んだ背景には、彼の即位過程が大きく影響しています。兄の天智天皇が実子の大友皇子（後の弘文天皇）に皇位を継承させたのに対し、天武天皇は壬申の乱を経て彼の甥を自害させ、自身が即位したという複雑な過去があります。このような事例が再発しないように、血統を安定させる狙いがあったと考えられます。

その後の展開

結果論として、天武天皇の期待は裏切られることとなります。681年、草壁皇子は皇太子に任命されましたが、その後、優れたライバルである大津皇子も政治に参加するようになり、天武天皇の後継者問題は混乱を深めました。天武天皇が亡くなると、鸕野讚良皇后は大津皇子に謀反の疑いをかけ、自ら自殺に追い込む事態に至ります。

草壁皇子もまた28歳で急逝し、鸕野讚良皇后は自己の即位を果たして持統天皇となり、草壁の遺児である珂瑠皇子（文武天皇）に皇位を委ねますが、文武天皇も若くして亡くなります。その結果、天武直系の王朝はほぼ断絶し、その後の皇位継承は大きな混乱を招くこととなりました。

他の皇子たちも皇位に就くことはなかったものの、志貴皇子の子孫が後に光仁天皇となる経緯もありました。このように、吉野の盟約は一見、単純な誓約のようですが、歴史を大きく動かす重要な契機となったのです。

参考文献

• - 『持統天皇と皇位継承』倉本一宏 吉川弘文館 2009年

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