吉野元順

吉野元順は、代々漢方医を家業とする家に生まれた人物です。名前は代々世襲されており、明治時代以降は東京府士族となりました。田安家の御抱医師を務める傍ら、東京府医師会第三大区幹事としても活躍しました。

文化年間（1810年前後）に、父である元順が市谷御先手同心組屋敷、および市谷甲良屋敷（現在の市谷甲良町1番地、および市谷柳町25番地の一部）を地借りし、医塾「回春堂」を開塾しました（東京府開学調書）。この医塾は、当時の市谷牛込切絵図にも「イシ」として記載されています。元順の居住屋敷は内藤新宿にありました。

明治維新後、元順は居を市谷甲良町1番地に移し、引き続き東京府医師会第三大区幹事を務めました。しかし、医塾「回春堂」がいつ廃塾したかは定かではありません。元順の死亡日は明治18年以降であることは分かっていますが、正確な日付は確認されていません。元順の死後、家督を相続した息子の元良も医師でしたが、塾を継いでいないことから、明治10年代には「回春堂」は廃塾したものと考えられています。

吉野家は、明治末期に元良が亡くなったため、この頃に医業を廃業しました。元順の孫にあたる辰彦は大正年間まで市谷甲良町に住んでいましたが、現在、子孫は関西に在住しています。菩提寺は牛込天神町にある芳心院で、墓碑は同町内の済松寺墓所にあります。

吉野元順は、漢方医として地域医療に貢献しただけでなく、医師会の幹部として医療行政にも携わった人物でした。参考文献は東京府公文書などに残されています。

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